北アルプス縦走

2002,7,24〜7,27

(燕岳・大天井岳・槍ヶ岳・双六岳・三俣蓮華岳)

起点:中房温泉⇒終点:新穂高温泉

0日目

やった。ついにこの日を迎えることができたのだ。夜も更けた新宿は雑踏だというのに私は急行「アルプス」に乗るホームへ向かっている。ここまで来るのにわざわざ各駅停車で時間を稼いでやって来たのだ。それだけ家を早く出たかった(注:家庭不和ではない)。
この計画が実行できるかどうかは自分のことより我がボーズ・ボンズの体調の善し悪しで決まってしまっただけにここ数日ひいていた夏風邪もなりを潜めたようでそれまでは大変気を揉んだ。それから私の体調というわけだが、まあフツーに暮らすには問題ないが、登山をするとなっては少々6月から運動らしい運動もしていなかったので体がなまっているなー、という自覚があった。そういう不安は出発時に荷物を背負って「靴」を履いた瞬間に襲ってきた。

「ただ歩くだけじゃないんだよな」

それはともかく新宿の「アルプス」を待つホームはもう独特の雰囲気。「おお、みんなアルプスか!」と、そういう人たちが跋扈している。平日でもこんなものである、週末などはどんな状態なのか少し興味がある。

「アルプス」に乗って左窓側。大変いい場所だ。何としても甲府盆地の夜景を見たいと思っている私としては最高の場所にいるわけだ。
しかし、いいのか悪いのか高尾までしか記憶がない…。起きた時は茅野だった。まあ寝心地は悪くても山梨県の間は「寝ていた」ということになるのだろう。これから山登りをする人間が夜景などに現を抜かしていいわけがない、そう、私は変わったのだ(嘘)。

1日目

やっと写真だ。前書きが長いのはいつものこと。だんだん書く気になってきた。

穂高駅には定刻に到着。「乗合タクシー」があるとHPで調べていたのでさっそく駅前を見るとマイクロバスだった。運賃は1860円。乗ってみてわかったことだが、これで中房温泉まで運んでくれるとは実にありがたい乗り物だ。タクシーでは7000円以上かかるというから大助かりものだった。ともかく、すっ飛ばして40分もかかる(林道は徐行)のだから安曇野は山まで思ったより遠く、山は山で見た目以上に深い。そんな秘境ムード漂うところに中房温泉はあった。

小僧、ついにアルプス登山の起点に立つ、と言うべき記念写真。周りもこれから登るぞ〜、という雰囲気が漂っている。山の上方は雲がかかってその先は見えない。「台風が南の方にいたしなー」と今後の天候に一抹の不安はあったが、この場では計画は実行だ。

標高はゆうに1400mを越えている。アルプスはスタートの時点で、「お前は既に塔ノ岳(家から見える丹沢の山)」なのだからスケールが違う。単純に考えてその1400mをこれから登るのである。アルプスはそれだけ高い山なのだとこの時実感した。

アルプスの三大急登と言われる「合戦尾根」を登り始める。スタートは5時50分だった。しばらくは樹林の中を登る。しかしこれが植林ではないので木の迫力がまた違う。「原生林」といった趣だ。第一、第二、第三ベンチを越えたところで標高2000m。まだこれから登った分以上は登ると思うと気が抜けない。天気は冴えない状態で、まあ樹林帯でよかったと言ったところ。被写体になるものもそう意識しないというのもよかった。

合戦小屋(右写真)には、8時15分到着。雑誌で見たスイカ売りの光景がある。登っている人間は食べないだろう、と下りツアーと思しき人たちが群がっている。10分休憩してまた登り始める。空が明るくなってきていきなり青空があらわれる。「おお!晴れるのか」と期待しない程度に感動する。

天気が好転して上の方が見えてきた。山小屋が見える。相当な高さのように見える。まあ、あと2時間もあれば余裕だな、と(私にとって)決して軽くないザックと靴を見ながら燕山荘到着時刻を予想する。が、伏兵(予想できたことではあるが…)登場。高山植物である。
別にこの手の植物に詳しくも何ともないのだが、「初めて」というハイな状態とまだファーストショットを撮っていない、という焦りから、「とりあえず」と写真を撮っていった。まあ、そんな時期ではあろうと思っていたがいろいろ咲いているのには参った。それだけが目的ならこの計画自体が崩壊するので、「この日は、コマクサ優先」と当初の予定を思い出して(笑)、山頂を目指した。

燕山荘、10時15分着。ここからは稜線歩きである。

「おお!これが燕岳か!!」

そんな風に感動して写真を撮っているので山頂までの足取りは遅々として進まない。おまけに「コマクサ、コマクサ」と目を皿のようにしているので視界も狭い。せめて昼までには山荘に戻ろうね、と私の中の時計係と約束した。ともかく、写真で見たことはあるものの実際に目のあたりにすると花崗岩質の山肌は実にまぶしい。山の形も堂々として見える(この時点では)し、ハイマツの緑とのコントラストもいい。岩は撮っても岩なのでこのピーカンでは画にしにくい、と言い訳してその辺の風景はあっさりと通過した。

「結構歩くよなー」とコマクサの写真を撮ったらこの文句、都合のいい人間である。あとは山頂に立つのみ、その一念。写真は頂上直下から見た燕岳。燕山荘に荷物を置いてほとんど空身で闊歩している人に比べ、財産一式背負っている私は重戦車のようなものである。足元がいちいちズルっとくるのがたまらなく辛い。

しかし後になってこの写真を載せようと思ったのは、この空の青さ、一眼レフならすぐPLフィルターの出番だぜ、とばかりの場面なのだが、撮ったカメラはコンパクトカメラ、おまけにネガフイルムである。

やはり、まがい物がない空は何もしなくても青いのだ。

おめでとう!小僧!!標高2763メートル。燕岳頂上。

寝ているのではなく、山頂の碑が埋め込まれているのでこんな写真になった。頂上そのものはとても狭い。もちろん周囲は断崖だ。調子に乗ると転落する可能性は大である。

山頂は11時15分到着。周辺で30分ほどブラブラする。北燕岳方面の展望もよく、帰りは頂上を横切って燕山荘に戻ろうと思い、コマクサを撮りながら進んでいった。

そこで、この登山者は遭難しかかった

コマクサの群落を撮っている間に、何の疑いもなく、(多分)撮影者が通った踏み跡を辿っていたことが判明。登山道とはかけ離れた崖の上に出る。山頂を横切るはずがどうしたことか思っていたより下っていた。花崗岩質の細かいザレ場をザクザクと登り返して道に戻ることができたが、何と言う安易で軽率な行動だったのか。これだけ視界が効いているのにこの体たらく、霧でも出ていたらと思うとぞっとした。

正午過ぎに燕山荘に戻ってきて昼食をとる。目の前にはいかにも「表銀座」という感じ(?)の景観が広がり、これから向かう方へは雪の残る槍ヶ岳も見えている。ひとごこちついて出発。今日の宿は大天井岳である。この時点では、この稜線を歩いて行けば大天井岳(それは正解だが、おいおい地図をよく見ろよ!)と考えていたが、それは甘い考えだった。
コマクサの群落を見ながらの稜線歩きは楽しい。天気もこんなに良くていいんだろうかという感じである。右の写真は表銀座の尾根から振り返って見た燕岳。

燕山荘から1時間ほど歩いて「大下りの頭」という所に立つ。そして絶句。「ここを下りてあの尾根を歩いて

あんなに登るのか!」と。

写真の大天井岳はガスがまとわりつき、さらに私には凶悪な様相に思えてならない。宿は「ヒュッテ」の方を考えていたのだが、頂上行ってそれからでは自信がなかった。まあ、大天荘という山小屋もあるのでとりあえず、大天井の頂を目指すことにした。

よくやった!小僧!!大天井頂上だ!!

結局、私は大天井岳に登っていた。途中の切通分岐でヒュッテに行くか頂上に行くか迷ったが、まだ陽が高かったのと、30分登れば宿もある、の思いから、「やっぱりここまで来て行かない手はない」と歩を頂へ。ゴロゴロしたガレ場のような登山道をジグザグに登っていった。時に16時10分、頂上に到達した。

標高2922m。改めて高い山だ。宿に入るまで、しばし頂上からの展望を楽しませてもらった。

さらに常念岳方面へ

喜作新道と穂高連峰

歩いてきた燕からの稜線

大天井岳からの展望3連発

2日目

濃霧だ。2日目の朝である。つい3時間前までは満月が煌煌と光っていたのに山の天気とはそういうものなのかというくらいがらっと変わる。前日は大天井登頂後は写真の大天荘に投宿。夏休みでも平日とあってか30名程度の宿泊で寝場所も広く取れ快適だった。夕飯も沢山食べて、その後も暮れなずむ稜線や槍ヶ岳を写真に思う存分撮ることができた。それはそれでよかった。

この日の天候は予報からして期待していなかったが、やはり朝日に輝く槍ヶ岳を見たかったと少しがっかり。しかしハードな行程にはこれくらいの天気の方が「写真、写真」なんて言ってないで登ることに集中できそうだと前向きに考えることにした。そう考えて4時50分、大天荘をあとにして一旦、大天井ヒュッテまで下山することにした。

濃霧の中を下山する私。その時パッと頭上が明るくなったかと思うと霧がみるみる晴れていく、驚きだ。
目の前には槍ヶ岳の勇姿。大天井中腹とは言えポジジョンに不満はない。真正面の槍は雲をまとってなかなか神々しい。「早速撮影だ」と雲の動きを見て、さらに朝の弁当をパクつきながら写真を撮っていた。

しかし、予報とは異なり、この好天はこれから崩れるというようにもなかなか見えなかった。「ありゃー、これじゃ、槍に着けるかな…」と、これから現れる絶景に対して写真ばかり撮って、遅々たる歩みになることが想像できた。

よくもまあ、こんような道を整備したものだなー、と大天井岳をヒュッテまで下りながら改めて思う。登山道でないところを歩こうなどと思わせないくらいの場所で逆らったら命の保証はないという感じである。浮石に乗らないように自分なりに慎重に歩く。
ヒュッテには5時40分。ここに泊まったら昨日と今朝の光景は撮れなかったと思うと同時に、少しでも頑張って登っておいて正解だったと思った。

喜作新道は途中2、3箇所、「おい、この登り冗談だよ」と、大天井からは楽そうに見えた稜線も西岳ヒュッテまで結構なアップダウンだった。写真は西岳ヒュッテまであと一息と言ったところからの穂高の山々(左写真)、涸沢には沢山雪が残っている。右写真は同じ場所から槍を向いたところ。結論から言えば、この日は私が槍に登るまでよく晴れていた。

人徳とまでは言わないが、どうだ!という感じではある(笑)。

西岳ヒュッテに7時50分に到着。ここで小休止して東鎌尾根を歩く。しかし、これがきつかった…。西岳からの下りもハシゴ・クサリが何度かあり、「なければ滑落するなー」、という険しさだった。
それはまあなんの恐怖もなく一つ目の鞍部に到着して、そこからの登りが強烈なジャブの連発と言う感じだった。1時間歩いたところでまた強烈な下り、下りきったところが「水俣乗越」だった。左は槍沢の表示。右は高瀬渓谷と人造湖、奥には針ノ木岳と景観には申し分なかったが、愛でている余裕はなかった。目指す槍はまだまだ遠く感じられた。

「このハシゴ凄いなー」、覗き込むと今ままで一番長いハシゴが2箇所もある。西岳からの下りは「滑落」だとすればこちらは間違いなく「転落」である。このハシゴがなければこの登山道は一般ルートではないだろうくらいのことは私にでもわかる。本当に何度でも思うことだが、この登山道整備には頭の下がる思いである。まあ、ハシゴを降りる時は、ただ三点支持を意識するのみ。しかし、このハシゴ長い…。途中のコンクリートの基礎に足が着いても切り立っているのでホッとできない。いやいや東鎌尾根で一番の恐怖を感じた場所だった。晴れていてつくづく良かったと思う。

写真は、まさに東鎌尾根を登っている時に撮ったもの。左写真は槍ヶ岳と北鎌尾根。右の写真は槍ヶ岳から延びる3000メートル級の稜線。雪渓がとても美しかった。

「あそこまで登れば何とかなりそうだ」と頑張って登ったところにヒュッテ大槍があった。時に10時50分。ついに槍の肩まで45分の所にまで来たのだ。絡むようにして登ってきた2人組の私よりおじさんパーティーとヒュッテで休憩。2人組は早くもビールで大休止の様相。私は水飲んで、正午までに槍の肩に行きたいな、と考えていたのですぐ出発。

写真はまさに大槍。穂先が絵のように尖がっている。

あんなところにどうやって登るのか。ここまで来たら恐怖と言うより好奇心の方が先立っている。こういう時は「下りる」苦労というものは一切考えていないので危険と言えば危険である(笑)。

ともかく、あと少しで槍の肩、今日の宿、槍岳山荘だ。

11時50分。槍の肩に到着。我ながらよく頑張って歩いてきたものだと思う。早速、槍岳山荘で宿泊の手続きをして、でかいザックはそこに置き、カメラ一つをひっかけて槍ヶ岳頂上を目指すことにする。

肩から頂上を見ると写真のように見えるのだが、更によく見ると(写真では無理だが…)確かに人が登っているのがわかる。しかし、さすがに槍の穂先は岩峰である。ただ登るというより、よじ登っているという形容が妥当な気もする。まあ、平日とあって、情報によるところの「渋滞」もなさそうなので、絶好の天気の中、一気に登ってしまおうと歩を進めることにした。

登り始めは、遠くで見るよりもしっかりした登山道があるので、「何だ、こんなものか」と高を括ったが、すぐに岩を縫うような登りになり、目の前に小槍が聳え立つような場所に出るとその迫力に足がすくんでしまった。人は多くはないようだが、少し前に一団となったパーティーが連なっているのが見え、「まあ、急ぐことはない」とその最後部に張り付くような形でゆっくりと登っていった。

写真のようなところで、時々好奇心に誘われ、後方を見やると笠ヶ岳が端正な姿を見せている。雲が下から次々と上ってきて、さっきまでの青空も隠れてしまった。まあ、頂上からの展望、というより頂上に立つことが目的になってしまったのでその辺はこだわらなかった。

下りルートと並行して登る所では、女性の一団が腰が引けてなかなか上手に降りられないようなところにも遭遇、案の定バランスを崩して浮石を下方に落としてしまう一幕もあった。「ラク!ラク!!」の声が周囲に飛び交う。こちらはどきっとして生きた心地がしない。あんな石でも転がってきてぶつかれば当たり所によっては大怪我である。降りる時は降りる時の苦労があるのだなー、などとマジで考えた。

最後のハシゴを登り切ると頂上だ。人が大勢いた。前述のパーティーご一行様はこの狭い所で集合写真を撮ろうと汲々としている。石につまづいても転落、人とぶつかっても転落というような場所である。自分のポジションを確保したら動かずに景色を眺めるしかなかった。と言っても、生憎ガスがかかってきて爽快な景観とはいかないのが残念だったが、またこのような騒々しい雰囲気ではその景色を楽しむ余裕などなかったといった方がいいだろう。

ともかく、祠が頂上のシンボルのようなので写真を撮ってもらった。登ったわりには感動が殺がれてしまったような気がしないでもなかったが、3180m地点に私は立つことができた。それはそれで重畳。めでたしであった。時に12時40分であった。

慎重に下って、再び肩から穂先を見たが、もうガスの中。この日、これ以降、槍はほとんどガスの中でもう昼を食べてビールでも飲んで身を横たえるしかなかった。

3日目

3日目の朝。私は元気になった。「なった」と言うのはそれまでは元気でなかったのである。前日、穂先に登ってから遅い昼食(山荘の「芯が一部凍っていたカツどん」)を取り、調子こいてビールなどを呷っていたら、何と夕食が喉を通らなくなったのである。私の嫌いなタイプの食事だったのだが、さすがに脂汗まで出てきたので不調を自覚して午後6時からベッドでうんうん唸っていた。「ごれじゃ下手したら、明日は槍沢から下山か…」とのシナリオも頭の中を駆け巡った。高山病か?とも思ったが(そうだったのかもしれないが)、富士山でかかったものとはタイプが違う。じゃあ単なる病気か?こんな山の上で病気とは勘弁である。ともかくいろいろなことを考えた夜はとても長かった。眠れはしたが、快眠とはいかなかった。用意してもらった朝食の弁当が食べられない状態だったら、下山も考えた情けない夜だった。

そして、朝4時。満天の星の下で私は三脚を立てて朝の景色の撮影の準備をしていた。体調はすこぶる良い。天気も申し分ないくらい良い。東正面に常念、南に雪渓を抱く大喰岳、槍の穂では所々ライトの光を頼りに頂上を目指す人が認められた。

槍からの大パノラマは最高に気分を良くしてくれた。中でも富士山と南アルプス、八ヶ岳の峰峰がクリアーな景色として見られたのには感動した。素晴らしい景色だった。

笠ヶ岳と「影槍」 西鎌尾根と裏銀座方面

槍岳山荘出発直後の光景。この日は西鎌尾根だ!

槍岳山荘を5時20分に出発して、これまた急峻な登山道を一気に下っていく。大天井の下りも石が多くて油断ならなかったが、この下りも強烈だった。岩の一つひとつが岩犀と言った感じで、下りはともかくこんなところは登山道に使いたくないなー、と正直思った。ころんだだけで大怪我しそうな所だった。

写真はその下りが終わって、西鎌尾根の稜線を進み始めたあたり、穂高やこの写真の笠ヶ岳の眺めが素晴らしかった。はるか下方には赤い屋根が見える。その山小屋が3日目の宿、鏡平山荘である。あそこまで下っても2300m。それを考えると槍を下ったとは言え、まだ相当高いところにいるのだな、と実感する。

西鎌尾根から槍ヶ岳と北鎌尾根 樅沢岳あたりから笠ヶ岳
三俣蓮華岳方面を望む 更に鷲羽岳も望める

おお、実に雄大な眺めではないか!西鎌尾根の左俣岳、樅沢岳の登りはきつかったが、それぞれの頂上からはご覧のとおりの絶景。槍の眺めも私好みで、端正な尖峰が美しい。大天井から見えていた裏銀座方面の峰峰は今や目の前。これまたたおやかな印象ひとつひとつの山に個性を感じた。樅沢岳からは一気に双六小屋まで下る。眼前にはこんもりとした巨大な双六岳が視界いっぱいに入る。「でかい山だな」と素直に思う。

要衝、双六小屋に到着。9時10分だった。これから双六岳に登って三俣蓮華岳まで行くのだ。少々の休憩をしたあと、ここには無料の水場があったので水を補給する。今日の宿は鏡平なので午後にはもう一度ここを通る。頼りになる中継地点である。

「そろそろヘリが来るから注意してくださいよ!」小屋の人が休憩をしている人たちに向かって呼びかけている。腹八分、水を補給して、双六岳を登り始めたが思った以上の登り、なおかつ背中に太陽まで背負っているのでなかなか暑い。飲んだ水などはあっという間に汗になってしまったような感覚だった。

おお!異観。双六槍!!

頂上まであと一息のところ

三俣蓮華の高さを感じなくなった。

小屋からの登りが一段落すると三俣蓮華方面へ行く「巻き道」がある。帰りは三俣蓮華からこの道を戻って来ることになる。一段落のあとはもうひと登りある。樅沢岳から見た印象とは違ったきつい登りで雪渓の雪で顔や頭を冷しながら登る。

登りきったところがこれまた感動的な場所だった。「頂上」はまだなのだが、頂上への登りを感じさせないくらいなだらかな場所に出た。写真でも見たことのある場所でなだらかな双六と槍ヶ岳の対比が素晴らしい。自然の巧まざる造形と、振り返り振り返り写真を撮っていた。南に見える笠ヶ岳も西鎌尾根から見た形とはまた違って見えそうした写真なども撮っていた。頂上はもう見えている。遠くは加賀の白山まで見えてきた。

思ったよりきつかったが、10時50分、双六岳の頂上に立つ。標高は2860m。ずんぐりした形とは対照的にあの燕岳より100mも高いのだ。そうして来た道を振り返るとはるか遠くに表銀座の一端が見えるが、燕岳などはその稜線の一部というくらい特徴が感じられなかった。それだけこちらの山の印象が強くなってきたということだろう。

それにしても素晴らしい天気である。腕などは日焼けとザックの上げ下ろしの摩擦で赤く擦れているのだが、痛いところはそこくらいで、体はもうすっかりこの環境に慣れてしまっているようだった。

登る山はあと一つ、三俣蓮華岳。正午くらいに着けるかな、と出発した。

双六を下り、雪渓の脇を登り始め、ワンプッシュで登ったところは丸山と言うピークだった。地図では尾根を歩いているので登りきったこの延長が三俣蓮華だと思っていたのだが、また大きな下り。「うそだろー」と思う。
一団が丸山の頂上で昼などを食べながら大休止している。あと30分は歩くのか…、と。そして下ってさらに大きな雪渓の脇を登るがとてもまぶしい。燕の白い山肌でも役立ったサングラスをかけながら迫り来る別の一団を振り切るようにして登っていった。

そして、12時5分、小僧、三俣蓮華岳(2841m)の頂上に立つ。

「今回はここで終点!!よく歩いたなー」と自画自賛。東方面には槍とその向こうには燕を含む表銀座が見える。鷲羽岳が間近に見え、回りの人からいろいろ聞いて、下方の平らなところは雲ノ平と教えてもらった。そこでそんな人に頂上での写真をお願いしたところ次のような写真になった。

「あの、写真撮ってもらえませんか?」(私が熟年夫婦を「写るんです」で撮ってあげた直後にお願いした)
「ええ、いいですよ。どちらをバックにしますか?」と聞くので
「この『三俣蓮華岳頂上』というのを入れて撮ってもらえればいいです」と応えると
「ああ、じゃあ『薬師』をバックに入れて撮ってあげましょう」
「あ、はい。それでいいです。お願いします」(薬師岳という山の価値はどうでもよかった)
「えーと、よし薬師が入ったよ、じゃぁ、いきますよ」
「ありがとうございました」、と私。

それでプリントされた写真が右のものである。

確かに「頂上」であることはわかる。

その人の言った「薬師」も入っている。

その人の善意は十分に(その場では)感じられた。

でも、これはないだろう…。悲しかった(泣)。

本当にこの写真を見てデジカメの購入を考えた(相変わらず金はない)。

三俣蓮華で昼食を取って、巻き道に至る急坂を下りる。下りたところが写真のような雪渓の下部。写真ではわかりにくいがとても広くて大きいのである。
滑り台みたいに遊べば楽しかろうとも思う向きもいるかもしれないが、そんなに簡単ではない。雪渓は危険が一杯。こうやって端から眺めるのが関の山である。

ここからさらに下ると雪渓の雪解け水を集めた流れがあった。何人かが休憩していて、思い思いに水を飲んだりしていた。少し抵抗はあったが、飲んでみるととても美味い。ザックに水もまだまだあったのだが、この美味さには代えられなかった。

そんなわけで体調がこの後悪くなったとしたら、これが原因と特定されることになるだろう。

しかし、この場所はとても気持ちのいい場所だった。ここまで来なければ見られない風景を撮ることができた喜びは大きい。意気揚揚と双六小屋までの道を引き返していった。

意外と巻き道にもアップダウンがあって、双六小屋に着いたのは14時35分だった。さて、これからは「鏡平まで一気に下るぞ!」と思っていた矢先、大きな誤算に気がついた。以前、笠ヶ岳から双六に来ようと計画した時にはしっかり考えていたのだが、「鏡平」に行く一心で今回はすっかり考えの外だった。それは、2622mのピークを乗り越えなければ鏡平には行けないということで、目の前にある壁のような稜線を見上げてげっそりした。

ついで書くと、ここまでで残っている(と思っている)フイルムは最後の1本だった。あとの撮影は、この日の夕方と翌日の朝、半々という計算にしてとにかく鏡平へ急ぐことにした。登りはつとめてゆっくり。そうでないところはすっ飛ばした。稜線に出るとはるか下方に赤い屋根と池が見える。あとは下るだけだと思ったら少し楽になった。
槍穂には午後から雲がかかり始め、夕方の撮影はなしかな、と考えていたところにクロユリを咲いているのを見つけてしまった。コマクサと並んでこの花も見つけたら是非とも撮りたいと思っていた花だったので10枚だけ、と言って14枚も撮ってしまった。これで夕方晴れたらちょっと悲しい。

鏡平には16時5分着。案の定、金曜日と言うこともあって土日をアルプスで過ごそうという人たちでごった返している。この日はひとつの布団に二人という聞きしにまさる混雑だったが、私の左隣は吹き抜けで、更に右隣には人が来なかったので糞暑い思いだけはしなくて済んだ。これはラッキーだった。周囲のいびきで眠れなかったのは甚だ残念だったが…。

4日目

長い旅だった…。自分の足で歩くというだけあって、見たものはとてつもなく多い。そんな山行も最終日を迎える運びとなった。

朝、3時半に起きて食堂の前に並ぶ。4時から朝食。一気に食べて、最後の撮影だ。鏡池には朝の槍穂を撮ろうとギャラリーが大勢いる。

残るフィルムは6枚。これでいけるのか?という大変心細い実弾である…。

実は前日、早々に布団でゴロゴロしていたら、外が急に騒がしくなったので見てみると、残照に輝く槍穂が見えてきたという。ヨッシャー、とばかり撮影した次第でこの朝撮れる枚数がかくのごとしになってしまった。しかし、残照のピークは過ぎてしまっていたがほんのり紅く染まった連峰はとても美しかった。槍に雲がかかることで一般(私も一般だが…)ギャラリーは気を揉んでいたが、私にとって印象的だったのは大キレットの方だった。景観に感動したのは言うまでもないが、いつかあそこにも行ってみたい、と欲のようなものが頭をもたげてきた。

朝の空は爽やかに明けていく。要所を撮った、と6枚はあっという間。変化していく雲の形に未練が捨てきれずにザックの中を引っ掻き回して未撮影フイルムを探す私。フツーはあるはずがないが、いつも整理整頓が苦手な私のことである。万が一と思って引っ掻き回してみると

おおっ!1本あったー!!

やはりこいつのザックは未整頓状態だったのだ。

これほど嬉しいものはない。地獄に仏、鬼に金棒、小僧にフイルムである。

思わずシルエットになっている槍穂に手を合わせて、気持ち慎重にフイルムを装填した。
おかげでその後の空の変化を撮ることができた(写真)。大変めでたい。もしかしたらこの山行で一番嬉しいことだったかも(情けない…)しれない。

鏡平を5時15分に出発。今度こそ下るだけである。目的地は新穂高温泉。スタートは長野県でゴールは岐阜県になる。日本でも有数の険しい県境を越えたことになるのだろうか、まあ連なる山に行政区のものさしはあまり意味はないと思うが。

小池新道はこれもまた下るだけといってもなかなかハードである。よくぞこの3泊4日、足と腰に故障が出なかったものだと自分でも不思議に思っている。捻挫でもしていたらこの下りは相当つらいものになっていただろう。やはり靴の威力は相当だ。それにしても秩父沢付近から見た雄大な笠への壁のような連なりは圧巻だった。残ったフイルムは今回唯一の「流れ」のために費やしたが、もはや撮影に対しての悔いはなかった。ここで撮影は終了。あとは本当にただ歩くだけである。

わさび平付近では見事なブナ林に目を見張った。きっと有名なところに違いない、と思っていたら、案の定そういう標識が立っていた。新穂高温泉から1時間程度のところである。ブナを撮るには非常に楽なロケーションだろう。早朝から気持ちのいい森林浴をさせてもらった。

さて、最後の写真である。左俣林道を下って着いたのが新穂高温泉。8時30分だった。週末ということもあって、林道を登ってくる人はとても多かった。途中、笠新道の分岐では、登っていく人を羨ましくも思った。

新穂高から見える切れ込んだ谷の名前は「穴毛谷」という。地図で見ていても気になった地名なのだが、その由来が林道脇の看板にご丁寧に記してあった。つまりは谷の形状が女性性器に似ているとの説明だったが、その説明板には、「………、深く切れ込んだ岩溝に下草が生えている様子が女性の性器に似ていることからこの谷の名はつけられています!!」とあった。私が注目したのは赤字のエクスクラメーションマークである。しかも2つも!!。書いた人はよほど気合いが入っていたらしいことが、このマークからしてわかる。左俣林道を歩いたら是非とも見てほしい看板である。

新穂高発の松本行きのバスは9時半発。バス停横の無料温泉の開場も9時半。ちょっと残念な気もしたが、まあこれも運の尽き。登山指導所で下山届けを提出して、各方面に土産などを買ってバスの人となった。

槍見温泉あたりから振り返ると槍は雲に飲み込まれて、西穂も霞がかかっているようにうっすらと見えた。また来る日もあるだろうと、これから待ち受ける灼熱の下界に向かって、安房峠のトンネルをくぐっている時から一旦の眠りについた。

松本駅。ここでも十分すぎるほど暑かった。

うーん、やっぱり夏は山が涼しいなー。

貴重な体験をした小僧でした。

ながきにわたっての雑文の読破ありがとうございました。

これでおしまいです

 

 

 

給料前でお金がない・・ 低金利でお得なローン探し 低金利でお得なローン探し
[PR] | ホスピス家事代行松戸高円寺亀戸六本木中国SEO対策消費者金融車 買取テンプレート沖縄旅行免許合宿二輪引越しプレゼントゴルフ会員権留学レーシックマッサージFX投資信託くりっく365アフィリエイトFXホームページ制作デイトレードハワイ旅行タイバンコクハワイ レンタカーベスト ハワイ ホテル レーツバリ島Hawaii hotelsHawaii Activitiesbhhrハワイホテルテキスト広告
【運営会社「パラダイムシフト」サービス】 ハワイ現地オプショナルツアーリラックマ) - ビジネスクラス航空券 - 格安航空券(1) - 格安航空券(2) - 海外ホテル - 韓国旅行 - タイムシェア - ホテル 予約
無料ホームページ - 携帯ホームページ - 無料ホームページ作成 - レンタルサーバー - ブログ - ヴィラ - ハワイ コンドミニアム - バリ島 ホテル - プーケット ホテル - 海外旅行 - 格安国際電話 - レップチェッカー - ホノルルマラソン - サイトパトロール - 誹謗中傷 - 学校裏サイト監視 - デルタ航空 マイレージ