三ツ峠山

(山梨県:1785m)

2002年2月11日

前回の大菩薩では登山前と下山後の天気は良かった。まさか稜線で吹雪に遭うとまでは予測できずに大変寒い思いをして撮影、しかも富士山はほんのさわりしか見られなかった。2月はどこに行こうか考えて、富士山撮影のメッカ、三ツ峠山に登ることにした。山に登って富士山の撮影、月一登山と撮影が一体となった一石二鳥の計画である。富士山は今まで忍野とか麓から撮っているばかりなので前回の大菩薩の借りを返そうと目の前の大パノラマを期待しての山行だったが・・・。

2月11日。前後の休みを妻に押さえられたのでこの日になった。夜が明けぬうちから始発に乗り、山梨県に向かう。秦野から町田まで来た時に、曇っているなーと思ったが、奥多摩方面に向かう一団と横浜線で一緒に八王子へ。「私より山に行っている人たちが行くんだから天気は予報よりはずっと良くなるだろう」などと楽観しながら中央本線に乗り換える。富士山を撮る、という目的ならば、この天候で「引き返す」という選択もあったのだが、大月まで来て、「丸一日見えないことはないだろう」などと、写真の富士急行線に乗って前進。

要らぬ苦労を背負い込むとは(いつものことだが)この性格ゆえの結果である。

やめとけばよかったのに…

富士急行線からは富士山が見える時もあり、「よーし、これなら天気は回復だ」などと救いようのない楽観をもって三つ峠駅で下車。後方の岩山が三ツ峠山であることに「これならコースタイム以下(登山4時間)の時間で行けそうだ」と判断。こんな写真を撮ってすぐに出発。ヤマケイの「日本300名山FAXサービス」で得た情報によるとしばらくはアスファルト道なので時間を稼ごうと平地モードで少し飛ばしていく。
背中の荷物は大菩薩の量とほぼ同じ。大菩薩でバテなかった(変な)自信が今回の山行でも通用すると思っていたから初心者とは恐ろしいものである。

駅から見た時はとても近く見えたのに登山道が始まる「達磨石」手前の「憩いの森」から見た三ツ峠山。「うーん、あそこを登って行くんだよなー」と地図を見る。しかし、4時間もかかるとはまだこの時点でも信じていない。現にこの時貯金は30分。「余裕だよ」などと内心思う。

そしてガイドにある達磨石直前の沢を渡る木橋を渡って

この登山者は遭難した

ガイドには「木橋を渡ってすぐに上がった所に『達磨石』がある」とあったのに、私は渡ったところに続いていた雪の踏み跡を何の疑いもなく辿っていった。「達磨石」そのものを見たことがないのも原因のひとつとも考えているが、この不注意さはどうしたことだろう、猛省すべき点である。なぜこの道が間違っていることに気づいたか、それは「踏み跡」を辿っていった先発の親子が立ち往生したところに結果として私も連なったからである。いろいろ話して地図を見て「やっぱりおかしいですよね」などと橋まで戻って、渡った時は見ていなかった登り道を見つけ何の事は無い写真の「達磨石」に着くことができた。

しかし、この親子がいなかったら、橋まで戻ろうという判断はもう少し遅れていたことは想像に難くない…。いいところで迷ってくれていた、などと思いながら、未舗装の登山道に入った。

アスファルト道路が凍結していたというのは先月の大菩薩で痛いほど体験したので驚かなかったが、登るにつれて雪が本気でこの山に積もっている事実に直面した。雪の積もった山を見たことはあるが、登ったことはない、これが今までの私の登山歴である。ちょっと遅いかな、と思ったが、アイゼンを装着。私は学生時代に野球なるスポーツの経験があるのでスパイクがついている履物には慣れているが、これをスパイクと言わずに「アイゼン」というところが登山らしい。「そうか、これが雪山登山か」と内心自己満足してアイゼンを「装着」し、直前とは違った快適なグリップを体験。「おお、これは楽勝だ」などとコースタイム大幅短縮をこの時点でも信じて疑わなかった。しかし、視界は悪い。コースで言う「馬返し」で雪がちらちら舞ってきた。

グリップは効いていても、雪の山道を歩くことに慣れていない(というか初めてなので)ので思ったほど進んでいない私。何時の間にか後続の人たちに追いつかれ抜かれていく。私が抜いた人などは皆無なのでこれは明らかな経験不足とオーバーペースのつけがここに来て表れてきた。それでも富士山が見えていればかなりの励みになっただろうが、雪がちらつく上にさっきまで見えていた向かいの尾根までガスがかかって見えない始末。モチベーションの低下がペースダウンに拍車をかけていた。それでも頂上直下の屏風岩まで到着、頂上付近の山小屋が見えた時には「まだあそこまで登るのか」と少し歩いては休み、歩いては休みの繰り返し。1700mの山でこんなに疲れるとは思わなかった。写真は屏風岩にできた巨大なつらら。リバーサルでも撮ろうと思ったが、思っただけで吹き降りの状況だったためパス。今思うと残念だった。

雪の中の三ツ峠山(開運山)に到着。タイムは4時間ピッタリだった。最初の勇ましさを考えると無様だがとにかく「登る」目的は達成した。ちょっと下に下ると山小屋のベンチやテーブルのある場所があるのだが、頂上でコンロに火をつけクッカーでお湯を作り、「お湯を注いで20分待つ」五目御飯を作る。しかし、そんなに悠長なこともしていられないので10分以内で食べてみた。「おっ、意外とふやけてOK」と最初は思ったが、お湯が冷えるのも早く、戦国時代の「干し飯」(よくは知らないが…)状態のところが後半は多く、侘しい(というより悲惨な)食事となった。

食べたらこんな写真でも撮って出発である。セルフタイマーで私のショット、というのが定石だが、それさえもする気力が失せてさっさと退散するのみだった。天下の三ツ峠山での展望も皆無。一体、何をしにきたのか、とリバーサルの撮影も皆無状態でこの遠征の意味を問いただす声が頭の中を駆け巡っていた。

「おかしいな…、この道完全に下ってる」と「四季楽園」から三つ峠山荘に向かう出だしでまた

道を間違えた

これはちょっとガイドでもわかりにくいところだったので雰囲気で判断して正解だった。しかし、結局はどれが木無山方面のトレースか自分ではわからなかったので、8人のパーティーに着いて行くことにした。果たしてその一団は河口湖を目指していたので道の確保はこれで何とかなった。雪も降っているという感じではなく「写真を撮るぞ」というところまで止んできている。1枚も撮れずに帰るのも芸が無いので、写真の木無山付近を皮切りに、雪の風景(これこそ芸が無いかも…)を撮っていた。まあ一矢は報いたか、という感じではあった。

三ツ峠山からの下山は霜山経由の天上山ロープウェー駅のコースでタイムは2時間半程度と記してあった。写真のような左右が斜面になって落ちているような文字通りの尾根道もあり変化があった。下山スタート時ほど道が不明瞭なところはなかったので迷わず前進できたが途中途中でつまらぬ写真を撮っていたこともあって予定より1時間ほど河口湖駅に着くのが遅くなりそうだった。天候は何となく回復の兆しが見られ、雪も止んで空が明るくなってきている。ただ回りの山には雲がかかっていて展望は相変わらず利かない状況だった。

御殿場行の最終バスに乗り遅れたら、大月経由で帰らなければならないため歩く速度を速めて、天上山手前の林道を横切るところで先行のパーティーに追いついた。あーやれやれという感じ。時間がなかったので天上山には行かずロープウェーの駅を目指している間に天気が急に好天し、展望台からの大パノラマを楽しむことができた。雲の間からの光芒(「天使の梯子」というもの)を撮ろうとおもむろに三脚を立てた途端に望遠ズームの重さにひきずられて三脚が転倒。泥などを落としている間に光のボーナスは褪せていた…。目の前に大きな富士山も下半分くらいは見えているのだが、ロープウェーの時間もあったので、「今日は富士山は見えない日なのだ」と自分を説得して下山した。写真はロープウェーから河口湖を撮ったもの。

帰りのバスまでは何とか間に合う時間に下山でき、あとは河口湖駅でバスに乗るだけ、とぼとぼと駅まで歩を進めて前方を見るとさっきまで姿を見せる気配のなかった富士山がドーンとその威容を見せつけていた。

また来いよー

と富士が言っているようだった…。どうせなら1日全く見えていなければさっぱりしたものの、最後の最後でこの仕打ちは何としたことか。「お前が三ツ峠の初登山で私を撮ろうとは過ぎたる企て。本気で撮りたいならまたおいで」と言わんばかりの演出だった。

決して楽な登山だったわけではなかったので落胆の色は隠せなかったが、まあ天気の読みの甘さからしなくてもいい苦労をしたわけだから、いい勉強として次回に生かしたい。
そんな反省といくつかの課題を残した山行だった。あーほんと疲れた。

最後の写真は御殿場駅で。フイルムが余っていたので自分の乗った電車を撮った。うちのボーズは電車大好きなので後日プリントを呉れてやったら案の定喜んでいた。まあささやかな土産ではある。

ところで、河口湖から御殿場行のバスに乗った後、この日は山中湖付近は雪が一時的に凄く降ったとかで(秦野でも降ったには降ったらしい)籠坂峠からは大渋滞という状態だった。すんなり帰れると思っていただけに情報通り峠付近でバスが止まってしまった時には「おいおい」と御殿場線の終電とトイレの心配をしてしまったほどだった。「あー、確実に富士急行線で帰れば良かったかなー」と一瞬後悔した。なるべく同じ道を通って帰りたくないというこだわりのある性格ゆえのハプニング遭遇だった。結果1時間遅れで御殿場に到着。家に着いたのは午後9時、「利家とまつ」を見ることができなかったのは甚だ残念だった。

三ツ峠山 山行記 おしまい

 

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