金峰山

(山梨・長野県:2598m)

2003,10,26

 

大弛峠。標高はゆうに2000mを越える峠である。この峠まで車で行ければ秩父最高峰の北奥千丈ガ岳と今回登る金峰山は標高差もそれほどなく、楽勝パターンとものの本から見てとれた。時期的にも山の紅葉は終盤を迎えている雰囲気なので時を待たずして出撃した。本当は11月にでも行こうと思っていたのだが、蛍子が臨時に休みをくれたので渡りに船とばかりに計画を実行するはこびとなった。

もちろん午前1時過ぎに自宅発。今までのドライブ最高到達地点を更新すべくサニー君はエンジン音も軽やかに発進した。この10月に2回山梨行きをするとは思わなかったが、もう遠征では慣れた道、246→篭坂峠→中央高速(河口湖→勝沼)を快走した。勝沼インターを下りてから20号線を調子こいて走っている時に塩山方面の交差点をすっ飛ばしたりして10分程度のロスがあったりしたが、大弛峠方面に向かう分岐のある牧丘まですんなりと来れた。そしてそこから奥まった集落を過ぎ、いよいよ林道へと突入した。

「この林道長いなー」真夜中のことなので対向車も同じ方向に行く車もない。道は狭くとにかく安全ギリギリの速度ですっ飛ばす。きっと危ないような場所もあるのだろうが、真っ暗なのでそういうよけいなプレッシャーもなく前に進んでいける。「知らない」という強みであろう。ガイド本の通り、林道ではあるがとても走りやすい。舗装されているのでサニー君もガタゴト言わずに走っている。そうしてまったくの一人旅状態で4時30分に峠に無事到着。夜の林道はさすがに怖かったが更にこの峠の状態は私を驚愕させるに至った。それは・・・、

駐車場がびっしり状態だったのである。

「おいおい、どことめたらいいんだよ・・・」と、とりあえずゆっくり前進して空いている場所を探す。駐車場が満杯なら少し戻って路肩に止めるしかないのだが、戻ればまた登ってこなくてはならない。そして戻る時にはこの状態から方向転換しなければならない。それは私の運転技術ではなるべく避けたかった(よく来ようと思ったもんだ・・・)。そうこうしている間に左側に1台分のスペースを発見。そこに停めることに決めたのだが、困ったことにほんとに1台分しかスペースがない(笑)。後続車がないので頭から突っ込むかどうか思案する。しかし、この駐車のパターンはいつもやっている駐車パターンそのものだった。「アンドー(いつもサニーー君の隣にとまっている車の持ち主の名)パターンで行く」と、慎重に前進して左にハンドルを切って微速後退でサニー君は弧を描き始めた。

おお!やればできるじゃないか。

一発できれいに収まった。ガラガラ状態の文化会館の駐車場で練習してもパッとしない蛍夫婦のドライビングテクニックだが、この実践で頭ひとつ抜き出たといっていい。帰ったら自慢しよう。

ともかく、山に登る前からこんな感じでエピソードは尽きない。もたもたしていると日が昇ってしまうのでせめて暗いうちに樹林帯を登ってしまおうと諸々の準備をして4時45分に金峰山方面に向かって出発した。

ヘッドランプを点けて真っ暗な樹林の中を進む。天上は快晴で天の川をはじめ星星が眩しいくらいに輝いている。安全が確保されれば夜の山道も捨てたものではないな、などと暢気なことを考えながら歩を進める。

一旦、小さなピークを越えたのか、5時10分に朝日峠を通過。ここから30分かけてちょっときつい登りをこなしたら視界が開けて本にも書いてあった展望の利く岩場に出た。この先はまた樹林帯になる様子だったので、まだ少し暗かったが、ここで朝日を迎えることにした。遥か前方には富士山がすっと美しい稜線を広げて立っている。

そしてここでアクシデントが発生した!

「何だかこのカメラ調子悪いなー・・・。いつもならスッとフイルムを巻き上げてくれるコンパクトカメラの調子がおかしい。このところ隙を見ればボーズがパシャパシャと碌でもないものを撮っているので、その最中に落としたりしていたんではないかという疑念さえ浮かんできた。ともかくフイルム入れたのにシャッターがうんとも寸とも言わない・・・。それと並行して三脚にはいつものカメラが載っかっていて富士山などを撮っているのだが、記録用に持ってきたこのコンパクトカメラの調子が悪いのでその合間合間にいじっていた。そうしている間にジーーーーーーーッと反応したので「動いた動いた」と思ったら、あろうことかフイルムを巻き上げていた・・・。もう絶句である。こいつ、いかれやがったな!思わず独り言になって出た。

そんな経緯があって今回の金峰山行のレポート中の写真はリバーサルをスキャンしたものである。だからいつもの写真とは(ちょっと)雰囲気が違うと思われる。その辺、心して見られたし(笑)。

しかし、いきなり士気がくじけたコンパクトカメラ事件だった。

右の写真は上の写真を撮ったの場所で秩父方面を向いて撮ったもの。手前の植物はハイマツである。高山に来たなー、という感じのする植物である。この山稜が県境になっているようで、南側の山梨県側は雲はないのだが、長野・埼玉方面はこの通り雲海である。富士山もいいけどこっちもなかなかいいなー、と日が昇ってくる忙しい時間帯だったが、稜線をはさんで右に左にとカメラを振り回していた。

ここで約1時間滞在。駐車場に車があんなにあったわりにまだ誰も登って来なかった。

因みに日の出直前から物凄く冷え込んできた。一応着込んでは来たのだが、指先にキーンとくる冷え込みには閉口した。無風だったがゆえに足元から来る冷気は、これが2000メートル級の冷え込みか、と体験するに十分な寒さだった。

 

写真を撮った岩場から10分も歩くと朝日岳(2581m)というピークに着いた。この頂から金峰山頂上まで橋をかければ20メートルほどの高低差なのでこの先一旦落ち込んでいる道のりを見てため息をつく。

一帯は写真のように立ち枯れた木々が多く独特な景観を作っている。富士山もまあだいたいこんな感じで見えていた。

ここで後続の単独行おじさんに抜かれる。私のペースはとてもゆっくり、樹林越しに見える富士山を拾うように撮ったりしていた。

 

 

 

大きな写真ばかり続く、ファイルの大きさの調整がいつもと勝手違いということで勘弁願いたい。まあ、ブロードバンド時代でもあるので出力に大して影響が出るとも思えないので今回のレポートはこんな感じでいくことにする。

朝日岳から見た金峰山方面の景色である。右端のピークが金峰山、シンボルの五丈岩がチョコンと見えている。あそこまで行くのである。標高差もそれほどないのでなだらかな感じに見えている。そして、その向こうに連なっている山々が南アルプス。甲斐駒ケ岳しか登ったことはないが、教科書的にその山の名前をチェックする。その中でもやはり北岳は目立っている。

ここからの下りはこのコースで一番危険だという。フツーに歩けば問題はないが、余所見をしてコケたら怪我はするだろうというジグザグ道だった。

 

これはサービスです(笑)。デジタルカメラの接写能力がどのようなものか知らないので何とも言えないんですが、少なくともストライキを起こしたマイコンパクトカメラではこんな写真は撮れません。

 

寒い寒いと思っていたら、標高もそれなりに上がっているのはもちろんのこと、冷え込みの影響なのか水溜りには氷、登山道脇のむき出した土からは霜柱が立っていた。平地ではまだまだ見ることのないだろうこれらのものを見て、やはりここは冬なのだ、と感じざるを得なかった。

何しろ、「地域限定」や「初物」ブランドに弱い私である。この「初霜柱」を何とか残そうとマクロレンズを使って撮った次第である。私にしては大変忍耐のいる撮影だった。光や形のいいのを見つけては登山道にしゃがみこんだり寝転がったりと後続の人が(一瞬)引いてしまうのではないかというスタイルだったのでは、と思う。

鬱蒼とした樹林を抜けてひと登りするとまた視界が開けてきた。頂上まであと一息といった「賽の河原」という場所。もうほとんど頂上と変わらない場所なので展望をも思いのまま。写真で下方に見えているのが信濃川上、もう長野県である。ここはもう何年も前になるが落葉松の紅葉を撮りにきたことがある懐かしい場所である。さすがに2000メートルを越えると葉そのものが散ってしまっていたが、こうして下界を見渡す限りにおいては落葉松は最後の輝きを見せている。大弛峠には10時過ぎには戻る予定なので、それからは林道をゆっくり下りながらそれらの撮影をしようと計画してある。

富士山をはじめ南アルプス、八ヶ岳が大パノラマ。もう言うことなどない、という山頂だった。

 

 

 

だいたいが、緊急避難的にリバーサルで記念写真を撮ることもあるがやはり私的な使い方としては、まさに牛刀を持って鶏を裂くが如く、ここまでの経緯が経緯だっただけに情けない限りである(笑)

これが山頂での写真です。

シンボルの五丈岩です。

ついでに金峰山頂からの眺め2発

また戻っていく朝日岳方面。一番奥は国師ガ岳かなー。

南アルプスの盟主、北岳です。

頂上を8時50分に出発して再び大弛峠に10時20分に帰ってきた。しばらく山小屋付近で休憩した後、後半戦の紅葉撮影である。

峠付近でも紅葉はとうに終わっているのでとにかく落葉松の黄葉をつかまえようとチンタラチンタラ林道をサニー君で下り始める。峠付近は駐車場からあふれた車で縦列駐車の嵐だったが、どこ吹く風とばかり横目に見て下山する。

左の写真はその落葉松ファーストショット。最初は特に考えずにパッパッと撮ってしまうのでこうしたおとなしいものが多い。

作品としては「秋の風景を撮りました」と、それ以上でもそれ以下でもない写真である。

 

 

私は「水戸黄門」という時代劇をよくは知らないので、その登場人物「八兵衛」が何をうっかりするのかわからないのだが、私はここに来てその本領を発揮することとなった・・・。

林道に車を止めたり動かしたりを繰り返して撮っているわけだが、横着なことに美しい紅葉の脇に車を止めて、写真を撮る状況になった。「ここでは偏光フィルターははずそう」とはずして車のフロントに載せた。そして気分よく撮影してすぐ発車。次のポイントを見つけて200メートルは移動したと思うのだが、下車してそこではフィルターが必要な状況だった・・・。

「何で、フィルターがない?」

つい数分前のことなのにすっかり忘れてしまっている(これは危ない)。

思い出してすぐにフロントに置いた場所まで戻る。もちろんフロントの溝にはないので振り落としてしまったのだろう、ポイントから2、30メートル移動した辺りから歩いて探し始めた。もしかしたら割れているかもしれないなー、などと思っていたら10メートルの地点で発見。落ち葉の上に落ちていたので破損していなかった。あー良かった、と胸をなでおろす。72ミリ径の偏光フィルターとなると紛失するとちょっと懐が痛い、私が使用するフイルム1か月分はする代物だ。去年のアルプス行で大天井岳頂上で同様の紛失劇を演じ、今年のアルプス行では北穂頂上に三脚を置き忘れるという喜劇まで披露している私としては、この根本のところが改善されない限り大変困ったことになるのではないかとこの直後も反省した次第である。

山行に限らず、ほかに三脚もう一回、おまけにサブカメラまでバスに置き忘れたという実績(自慢にはなるまい)もあるだけに前途は多難である。

落葉松の新緑と黄葉は好きな景色のひとつです。

全山黄葉。飽きるくらい見てきました。

林道の前半戦終了。川上牧丘林道の要衝、柳平というところで小休止。散策しながらいろいろな紅葉を撮る。とてもいい天気で空も高く青い。本当に気持ちのいい散策だった。

ここからは往路の塩平方面には行かないで「そま口林道」で牧丘方面に向かった。山行のゴールは道の駅「花かげの里・牧丘」である。

道路地図には塩平経由がメインルートとして載っているような感じがしたが、実際に走ってみると後者のほうが最近整備されているところが多いのか道幅が広いところも多く走りやすかった。後半部の紅葉は既に落葉松でなく、字の通り紅葉もあり、前半ほど丹念には撮らなかったがところどころで撮っていた。

牧丘の集落に出る前にはりんご畑、ブドウ畑が広がり、普段見ることのないそうした里の秋もスナップした。特にブドウ畑の紅葉もなかなか素晴らしいものがあった。甲府盆地が桃色に染まる春とは対照的な景観は足をとめさせるだけのものはあった。

林道後半部の紅葉です。

ああ、山梨の秋、という感じがしませんか。

いやいや、金峰山。アプローチは車でも大変だったが、この時間の使い方は最近見ないくらい効率的だった。目いっぱい紅葉も撮ったという感じもしたので、今年の紅葉はこれでいいかな、と思っている。欲のない奴だと言われそうだが、まあそんな人間でもあるのでその辺はご了承願いたい。

買った土産はもちろん「信玄桃」を中心に2、3品。特に甲州屋本店の「月の雫」は蛍子のお気に入りでもあるので買って帰った。ひと月に2度の山梨遠征。さすがにボーズは「山梨には『桃』しかないの?」と生意気にも言ったので、今度は別の方面に繰り出そうかと思っている。

そんな秋の有意義な一日を山梨で過ごしてきました。

 

金峰山山行記 これでおしまい

 

 

 

 

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