雁ヶ腹摺山

(山梨県:1856m)

2003,4,29

 

我が家での会話
「お父さん、今度は何て山登るの?」5歳のボーズが準備をしている時に聞いてきた。
「ガンガハラズリヤマだ」と、私。
「何それ。ギャハハハハハハハ!」
「・・・・・・」

まったくもって山に失礼な振る舞いだが、確かに地図を見て私も「この山何て読むんだ」と最初は思った。そして読んでみるとことの外、音が面白い。きっとボーズもそんな風に聞こえたのだろう。その気持ちはわかる。

この山に登ろうと思ったのは頂上までのアプローチの長さ(求めれば・・・だが)がなまった体には適当と考えたのと、日が長くなってきたこともあってそれなら行けそうだ、と踏んでのことであった。まあ、動機としてはやはり山の名前が面白かったから、という単純な要素も十分にあるのだが・・・。それはともかく写真の撮影としては新緑目当てであった。

例によって小田急の始発に乗り、町田・八王子とJRを乗り換え大月へ。バスが金山鉱泉まで出ているがそれに乗るとなると大月で1時間以上待つことになるのでここはタクシーに乗る。路線としては小型バスが走るのだろうが道は狭い。バス停終点の遅能戸を通過して鉱泉の手前になると岩剥き出しで車一台通るのがやっとではないかという切通しを通ったりと、とてもこの先人家などあるとは思えないところだった。しかし、心配は無用とばかり数軒の家が見えてきた。そこが金山鉱泉だった。写真の通り連休中ということで鯉幟がぶら下がっていた。準備運動などしていると大月のタクシー乗り場にいた年配の3人組もタクシーでここまでやってきた。

金山鉱泉からいきなりコンクリートの急坂を登る。本当にいきなりという感じで思わず「雁ヶ腹摺山の標高は?(それくらい覚えて行けよ)」と情けないことを思った。しかし、目の前の新緑は見事なものでところどころに山桜も今を盛りとばかり咲いていた。「うーん。いきなり疲れたから撮影だ。ちょうどいい」と口実を作って写真を撮っていた。

コンクリートの道をある程度登ったところで登山道の始まりといった感じの道になり、一旦沢の方へと下っていく。そこから金山峠までは登りである。流れがそばにありいい場所があったら撮影だ、などと考えていたがそれほどでもないのでペースをつかみながら登っていく。スタート直後はザックの重さに「うっ!」と気持ちまでくらついたが、1時間もしたところでだいぶ慣れてきた。ちなみに今回は「なまった体に喝」という(とってつけたような)サブテーマを掲げたためザックの重さはアルプスバージョンである。ただ、靴まで重くするとつらい(この辺が情けない・・・)ので足回りだけは軽登山靴にした。おかげで足取りはやや軽快である。沢沿いの道は植林と雑木林が交互にあらわれている。地図を見ても「登り尾根」と書いてあるところは峠を越えてからなのでまだまだである。


峠までの道で写真のような小さな滝を横切った。「これは撮ってみよう」とまた不規則な休憩をとる。被写体としてはこぢんまりとしていろいろな撮り方ができたのだが、実のところこの手の「流れ」写真は苦手である。ことあるごとに撮ってはいるが、「どうもうまくないなー」といつも思ってしまう。まあ、この先いい流れがあるとも限らないので「練習、練習」と撮っていた。

登り的(こんな言葉はないと思うが・・・)には、この後から峠までまたひと登り。植林の中なので暗いし、退屈だ。

 

 

左の写真はわかりにくいが薄紫色したつつじである。この写真では既に「登り尾根」に突入しているわけで、それまでは金山峠から一旦下って百軒干場という川原のようなところをだらだらと登っていた。峠から登り尾根の登り口までにも眺望がいいところはあったが地図で確認してもそこから見えるピークはどうも目指す頂とは違うらしい・・・。登り尾根そのものが南北に長い尾根なのでその尾根の一端のようだった。果たして登ってみると尾根登りは小ピーク越えの連続なのでその「頂」に着く度に「ぐっ!?」とくる(その都度地図でも見ろよー)ものがある。まあ、そんな尾根を登り始めたわけだが、周りはとても明るい。暗い杉などの植林帯は金山峠以降はなりをひそめて、落葉松はじめ芽吹いたばかりの広葉樹が多くなってきた。そんなわけでつつじも咲いている場所なのである。

落葉松の芽吹きは美しいと思う。去年の同じ時期、雲取山に行った時にその妖しいまでの色に魅了された。「おお!ここでも撮ってやるぞ」とレンズ越しに見るその色にまたまた感動してしまった。そんな落葉松林のゆったりした尾根道をのだらだら登ると、あろうことか(だから、地図を見なさいって)思いっきり車が通れる林道に突き当たった。「こんなに登っても林道があるのかよー」と少しがっかり。がっかりしたので小休止。地図を見るとこれからがまた登り一辺倒だと記してある。

まあ、急ぐ道でもないのでその林道を横切り白樺平という名前がなかなかよい場所を目指した。


白樺平はそのがっかりした林道から近く、「平」というだけあって気持ちのいい場所だった。そして写真のような樺の木がにわかに多くなってきた。樺にもいくつか種類があるのだろうが私は詳しいものではないので、そのなまめかしいと感じるほどのその木肌を写真に撮るのみである。そしてお腹も空いてきたのでカロリーメイトを食べながら撮っていた。実に片手間であるが、自分なりに時間を節約しているのである。(いいわけ)

 

 

 

白樺平からはまたピークを越えてはまたピークという登り。木々の芽吹きも間だ見られないくらい標高は稼いでいるようだ。そんな中、登山者の一団が下ってきた。カラフルなウエアをめいめいが着ているところを見ると女性が大半を占める団体のようだ。私は登りでもすれ違いは動きたくない(休みたい)のでいつも対向者は「どうぞ」と言って通してしまうのだが、この団体ときたら化粧の匂い(もはや「香り」とはいいがたい)がすれ違いざまにプンプンする。私はこの香水の匂いが嫌いなので全員が通り過ぎるまではなはだ苦痛だった。汗が気になるなら消臭スプレーでもかけておけばいいのに。「あれは絶対に香水だ」(妙なところでこだわる)と、私よりもはるかに年配のおばさん連中に対して嫌悪した一幕であった。

で、そんな不愉快な思いを(勝手に)した私の体に変調が・・・!右腿の後ろがプルプルしたかと思うと何かの動きに合わせてビクっとくる状態になってしまった。ちょうどこの項の写真を撮った直後のことである。頂上まであと少し、という表示を見て安心したのか肉離れの前兆とも言うべき事態に「何で、こんなところで・・・」と思った。結局一時的な痙攣で、休み休み歩くことでまたもとに戻った。「あー、無理はいけないなー」と考えたが、やはり運動不足のつけがきているのだ。しかも山でその症状が出るなど最低である。こんなので帰りは大丈夫かいなと、まあ言葉以上の心配はなかったがちょっと焦った事態だった。

と、いうわけで11時40分ごろ小僧こと私は雁ヶ腹摺山の頂上に立つことができた。タイムもメモ帳にメモしておいたのだが、この山行記を書くのを延び延びにしてしまっている間になくしてしまった(だらしない・・・)。それでも確定している時間はあるわけで@大月に着いた時刻A山頂に立った時刻B山頂を出発した時刻C桑西というバス停からバスに乗った時刻、の4点(ほとんど意味はなしていないが・・・)は押さえてある。要はその時間内に撮影をしながら余裕で山に登れたということである(ほとんど強弁)。

ともかく、脚の不調の件が心配ではあったので昼食を含め、長めの休憩をとることにした。天気はうす曇り、風もなく穏やかで寒くないのが何よりよかった。

山頂から富士山方面を見る。

霞の向こうに見えているのだが、

この写真では三つ峠がやっと。

山頂付近はなだらか。

立派な針葉樹が立っていた。

本当に大きな木である。

落雷の格好の標的だろう・・・。

雁ヶ腹摺山山頂付近の様子


頂上からは大峠経由の林道歩きでバス停の桑西まで行く。

で、その頂上直下で見つけた面白いもの、それが左の写真である。大きなひとつの岩なのだが、長年の浸食によってきれいにクラックができている。実に自然の造形とは妙なるものだと感じ入った次第である。光線状態がちょっときついのが残念だったが、こんなのを撮るのも私の嗜好である。

ここから大峠までは300メートル近く一気に下る。この300メートルというのは私にとって実にわかりやすい高さである。いつも「東京タワー」を基準に考えているのでこの場合も「東京タワーひとつぶん」と考えて下りた。まあ、それが六本木ヒルズ、ランドマークタワーでも何でもいいのだが、それぞれの高さを知らないのでやはり私の場合の目安は333メートルである。

 

この写真は雁ヶ腹摺山を大峠に向かって降下中(こういう言い方もないと思うが)に撮った大菩薩に続く尾根である。見える範囲で一番高いところは黒岳という山で1900メートル以上あるのでついさっきまでいた山頂より高い。ちょっと癪にさわる山ではある。

周りは樺の大木が多い。春にはまだ早いのか芽吹きさえもないのだが、そのおかげでこうした景色はよく見える。脚の調子もいいようなので何とか無事に林道まで行けそうである。

林道に着けばあとは一本道。まず心配はないだろう(油断は大敵だ!!!!)

大峠雑感

大峠、標高1500メートル。実にきりのいい数字である。しかし、ここは写真のように登山のための駐車場と化していた。ここからなら前項の黒岳まで2時間弱で行ける。おまけに雁ヶ腹摺山までは1時間ちょいで行けると言う・・・。別に望んで登り尾根コースを選んだ私なのでつべこべ言うこともない(いや、言ってる言ってる)のだが、こんなに簡単にアプローチできていいの?と思わざるをえなかった。しかもこの林道は、とても立派。軽登山靴で来てちょうど良かった。この長大な林道(舗装路)を重登山靴で歩いた日にはいたずらにソールを消耗してしまっただろう。しかし、苦労したわりにこの結果には(今回は)正直力が抜けてしまった。いやいや大峠よ、今度来る時には黒岳登山にサニー君を導入しようと、わけのわからない約束をする私だった。

しかし、1500メートルは大盤振る舞いだろう。本当にこの林道は(歩いてみても)立派だ。塔ノ岳(おお!我が近所の主峰!!)にこれだけの車は止められない(注:車では登れません)よなーと、こういう場所があるところにはあるのだと知った次第である。

これは大峠から少し下り始めてから撮った雁ヶ腹摺山。なかなか登っていて実体のつかめない山だったが、人里からとても離れているので見えなくてもそれは仕方ないことである。こうしてみると標高差は400メートル近くしかないので何となくその辺の山という感じがしないでもないが、そこは1800メートル以上あり、富士山が美しく見える山である。やはりその辺の山と一緒にしたら気の毒である。

あと、画面ではとても入り切らないので説明だけにしておくが(フイルムが残り少なくなってきた・・・)、この山頂から右に長く長く尾根が延びている。それが私の登っていた「登り尾根」でそのところどころにあるピークも横を歩くことでよーく確認できた。よくもまあ文句も言わず(嘘)黙々と登ったものだなー、と思った。

桑西まで続くこの林道は長い・・・。よくできた舗装路なので時間帯も相俟って私を抜かしていくマイカー登山組は後をたたない。しかし、逆に言えばこの林道を歩くことによって快適な撮影は約束されていた。今度は冬の山から落葉松の芽吹き、山桜、萌える新緑と高度を落としていくのである。それはそれは実に劇的な光景だった。何より午後の光線状態が良かったのでメリハリのある写真が撮れた。三脚を常時担いでいても足元がしっかりしているフツーの道なので移動も楽だ。

しかし、そこで何を間違えたか、左足首をグキッと内側に捻ってしまった・・・。

ギャーッ!!!!

本当に魔が差したとはこのことか・・・。何の変哲もない場所での捻挫。一瞬足が折れたかと思った・・・。これが重登山靴だったらしっかりガードできていたのだが、案の定より履き慣れた軽登山靴のハイカット部分は柔らかくなっているのでそんなアクシデントを防ぐことができなかった。本当に漫画のような叫びが一瞬山にこだました。結局は声の大きさほど大事はなく、もう一度やったら知らねーぞ(自分のことでしょう・・・)と言い聞かせて復活した。

まあ、普段から余所見の多い人間である。本当にいい教訓になった・・・。

ああ、写真の説明があった。山桜満開。色とか形とか何種類かあったようだが、その辺は詳しくないので全て「山桜」ということで勘弁願いたい(投げやり・・・)。

光線状態がいいとネガでもこれだけのものになるのだなーと感動。HPではこの程度なので臨場感をお伝えすることができなくて残念なことこの上ない。

さて、歩いていてもう終盤という時に立ててある説明板で知ったことなのだが、この辺の森は明治天皇時代からの恩賜林ということで保存が行き届いているらしい。それで私は「あー、なるほど。だから新緑が美しいのか」という程度にしか理解できなかったが、要は保護林であるとのこと。

あー、今日は奇しくも「みどりの日(2003年現在)」、実にいい色を見たなーと目の保養になった1日だった。

出番が少なかったので最後くらいは〆させていただこう。バス停を強引に引き寄せているのではない、もともと傾いていたのだ。富士急の桑西というローカルバスの(一部)終点なのだが、山間のこうした雰囲気は好きである。人家はあるが里山というにはちょっと深いんじゃないの、というくらいが私の好みに合っている。そんなローカル気分で大月まで帰れるのかと思ったら次のバス停からどこぞの高年の山歩きグループが大挙乗車。もうバス待ちの間にビールだ酒だとかっ食らっているのでその酒気たるや・・・。あとは耐えて20分。迷惑と一緒に大月に到着した。

大月駅前では桔梗屋(例によって・・・)系列の店があったので「信玄桃」の大きい箱を買った。もはやボーズだけではない、ボンズまで参戦してくるのだから個数は必要なのである。だからお土産も年々高額化している・・・。

我が家での会話

「お父さん、今日どこの山登ってきたの?」と、ボーズ
「雁ヶ腹摺山だ」と、私

「何その山、ギャハハハハハハ!!!」
「・・・・・・」

まあ、よくある落とし方だが、そういうわけで今回の山行記はこれでおしまい。

 

 

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