ライシャは銀と宝石を相手に格闘しています。
宝石細工の技を見に着けようとしているのです。
といっても本格的なものではなく、旅にも持っていける道具類と手近な材料を使う簡易的なものですが。それでもものライシャがこの技を持っていれば、ライディストが取り扱う品にも多少なりとも幅がでるはずです。
現に、タペストリーや高価な布類などは、旅の途中でも高価な品の修繕や改修ができるライシャが隊に入ってから扱い始めた品なのですから。
家の扉がにぎやかに叩かれる音がしたのは、3個目のネックレスの作製にとりかったときでした。
「…?」
ライシャは半ば訝しみながら外を見ます。
あの騒々しい叩き方はロイのノックに似ていますが、ライディストが旅を終えて戻るにはまだ時間がかかるはずなのです。
まさかロイが仕事と仲間を放り出してひとりで家に戻るなどということもあり得ません。
「ライシャ!開けろ!」
扉を叩く音に交じって人の声がします。
「…!ロイ!!」
ライシャは道具を放り出して慌てて家の戸口に向かいました。
詳しい事情は知らないけれど、ロイがひとりで戻ってきたのです。これはただごとではありません。
「ロイ!何があったの!?」
戸を開けると同時にライシャはロイに声をかけます。
ロイは急いで家に入りました。
「あまり騒ぐな。他の隊員の家族が気づくだろうが。」
「まあ。あなたの声の方が大きかったわよ。」
「そりゃすまん。
ほら、これ。」
ロイは大事そうに抱えていた荷物をライシャの前に放りました。
ほどけた包みの端からは布が見えます。
「これ…」
「来年は成人だろう?
フェイラムのお姫様にはお粗末な品かもしれんが…
これで何か作るといい。」
「来年って…
ロイ、おぼえていたの?」
ロイの放った荷物を拾い上げたライシャの瞳には光るものがあります。
ライシャ自身も自分が来年20歳になることは今日まで忘れかけていたのに、それをロイはおぼえていてくれたのです。
しかも、ライシャ一人のために仕事に穴をあけるようなことまでしてくれたのです―
「あの家を出たのはたしか18だっただろう?」
「そうよ…
まさかあなた、このために来るなって―」
「贈り物は秘密にするのが常識だろうが。
あの父上でさえ、おれが20歳になったときは家に呼び戻して祝いの宴を開いてくれたんだ…。
一緒に暮らしていて、しかもおまえが来年20歳になることを知っているおれが放っておくわけにもいかないだろう?」
「有難う…!」
ライシャはロイの身体に腕をまわしました。
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