中央アジアを舞台にして、10人の神々と土着の人々が織り成すドラマを集めた短編連作シリーズです。
隨分前に刊行された作品なので単行本を入手するのは難しいかもしれませんが、21世紀に入るか入らないかという頃に復刻版が刊行されました。
この単行本には「天と地の神」「永遠を見る娘」「そしてカレーズ」「星の落ちる谷」「月の宴」「月の宴U」「エンディング」の7編が収録されています。
「天と地の神」
アゼルの住むブハラの町がモンゴル軍の襲撃に遭ってしまいます。この事件で故郷も恋人も失ったアゼルが自害しようと考えていたところを神に救われ、幼いツヴィを託されます。
赤子を抱えたアゼルが咄嗟に助けを求めて祈ったのは、彼女の故郷を奪ったモンゴルの神でした。
彼方を見る金色の瞳を持つツヴィの誕生物語ですが、この物語のなかには神や宗教に国境はないということなのかもしれませんね。
「永遠を見る娘」
短編集「カレーズ」に続く物語として見ることもできるでしょう。
ツヴィの「彼方を見る金色の瞳」の力は幼い頃から発揮されます。ツヴィの金色の瞳の力と、周囲の人々とあまりにも異なった外見は母子の安住の妨げになっていました。
アゼルは自分たちがひとところに留まることができない理由を決してツヴィには明かさずにいたので、ツヴィは自分の姿さえ知りませんでした。
ある村を追われたとき、ツヴィは、アゼルがどんな思いでツヴィを見ていたかということ、そして成長してからもずっと心に残る言葉を告げられます。
「そしてカレーズ」。
元盗賊ナセルの視点で語るツヴィの物語です。
ナセルは、母の遺言を信じてカレーズを探すツヴィと一時的に行動をともにします。
短い旅のなかに立ち寄った遺跡で、ツヴィはナセルから思いがけない贈り物を受け取るのでした。
「星の落ちる谷」
カイとビビは幼馴染。カイは仕事を怠ることしか考えない青年になってしまいましたが、それでもビビは彼を見捨てることができずにいました。
家族にまで見放されてしまったカイは子供の頃の空想を思い出し、山あいの谷に落ちる「星」を拾いに行くと言い出します。
カイとビビは谷に落ちる「星」の正体をつきとめるのですが、旅はふたりに「星」以上の宝をもたらしていたのです。
「何かを最後までなしとげる」ということの意味をもう一度考えてみるといいでしょう。
「月の宴」
詩織がツヴィを10人の神々の住む地に連れ帰ります。
ここでツヴィは赤子の頃の自分がどのようにして彼らと関わっていたかを聞かされることになります。
「生きる」ということは決して楽しいばかりのことではなく、幸福や不幸も視点によって異なってくるもの。そして本当に人間として生きるということの意味はどこにあるのか。
詩織がツヴィに語った言葉にはそうした意味も含んでいるのでしょうか。
「月の宴U」
九州の閉じられた山村で子供時代を過ごしていた詩織は子供の頃から周囲と異なる自分、自分の力について疑問を持ちつづけています。
彼女と関わる人々は、ときにその疑問を蒸し返してしまうのですが―
「エンディング」
このシリーズのラストにあたっての、あとがき短編漫画です。
「シルクロード」の世界へ―
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