中央アジアを舞台にして、10人の神々と土着の人々が織り成すドラマを集めた短編連作シリーズです。
隨分前に刊行された作品なので単行本を入手するのは難しいかもしれませんが、21世紀に入るか入らないかという頃に復刻版が刊行されました。
この単行本には「雪の朝」「テイサの記憶」「サーハスの鏡」「王女の首飾り」「百合の咲く谷」「綿の城」の6編が収録されています。
「雪の朝〜ホワイト・カングリー〜」
神の金髪が織りこまれた白い絨毯の切れ端を手帳にはさんでいたヘディンの血に連なる娘パメラは、25歳で消息を絶った叔父を探してヒマラヤへ向かいます。
祖父やヒマラヤに消えた叔父と同じく、伝説の神に一目会うことを望みながら…
しかし、彼女がその旅の中で見つけたものはもっと別の「なにか」でした。
「カングリー」というのは、現地の言葉でヒマラヤを示すそうです。
「ヘディンの手帳」から続く作品としてとらえていいでしょう。
「テイサの記憶」
孤児として小さな村で育ったキャラは、ある日、たちのわるい草のなかで難儀している神を助けます。
神は少女にちょっとしたお礼をするのですが、この小さな出来事はキャラのその後の運命を大きく変えてしまうことになるのです。
「プライドが高い」というと、「高飛車」という言葉をぱっと連想することが多いかもしれないのですが、本当に「プライドが高い」というのはそういうことではないのかもしれませんね。
この物語の舞台になっている「ヒワ」という国は、現在の世界地図で言うと中央アジアのウズベキスタンあたりにあったそうです。、現在も町として栄えていて、ヒワの町は歴史遺産として登録されているそうです。
「サーハスの鏡」
かけおちしようとしていたイスマイルとマリムは、逃避行の途中で「西夏」という滅んだ国の財宝の在処を示す鏡を入手します。
イスマイルがこの鏡を入手したことを幸運だと感じたのですが、この鏡をきっかけにしてふたりの心は大きく離れてしまうのでした。
なお、「西夏」という国は昔実際に存在していました(財宝伝説があるかどうかまでは不明ですが)。
「王女の首飾り」
王女ミランシャは、王宮づきの宝石職人の息子オルレンと仲良く育ち、いつしか彼に心をよせるようになっていましたが、彼女には定められた婚約者がいたのです。
王女の婚約者ハサンは、ミランシャの本当の想いがどこにあるかを知って、王女にひとつの提案を持ち出します。
考えた末に出したミランシャの結論は、現代のわたしたちの目線で見ればどのように映るのでしょうか?
「百合の咲く谷」
御殿医を父に持つ水春は、家にあった青い百合の薬によって大病からの生還を果たします。しかし、その百合は帝だけがつかうことのできる薬でした。
水春が帝の薬で助かったことを知った帝から新たな青い百合を探すことを命じられた水春は探索の旅に出ます。
人が本当に何かのために生命までかけるときというものは、時には神の心や運命さえも動かすこともあるのです。
「綿の城〜パムッカーレ〜」
ジェラルディン・ルーミは旅の途中、アトスが属している神学校に一時的に身を寄せます。そこで彼は誰もが驚くような説を編み出すのですが、それが騒動を引き起こしてしまうのでした。
この作品に出ているジェラルディン・ルーミも実在人で、彼の廟というものもホントにトルコにあります。
「パムッかーレ」とは、トルコの言葉でそのまま「綿の城」という意味になります。ここは石灰岩でできた白く美しい温泉地帯で、昔は実際に入ることもできたそうです(現在ではお湯の量や景観保護などの問題のために入ることはできなくなっているようです)。
現在は世界遺産に登録されています。
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