目の前に、平山さまがいらっしゃる。テレビで見るのと同じ顔だ。
(わあ、最近のテレビ技術って凄いなあ、3Dだ)
と馬鹿なことを考えるわたし。あの、野猿の平山さまが今目の前にいましますという
事実を受け入れることができない。
(きっとこれは幸せな夢なんだ…)
妄想モードに入りかける。その時、右手に提げていたビニール袋がカサリ、と
鳴った。そうだ! わたしにはやることがあるのだ!!!
わたくし
「あのっっ、深川名物の『ウロコダンゴ』ですっっ!食べてくださいっっ」
平山さまが深川市をご存じであらせられたか甚だしく疑問であるが、そんなことを考
える余裕はなかった。がさっ、と『ウロコダンゴ』の入ったビニール袋を差し出すウロ
コ。
平山さまは、お土産をお受け取りになる仕草さえ麗しかった。
今日だけでも腐るほどのお土産をお受取り遊ばしているにも関わらず、いつもは下が
り気味の愛らしい眉を、きゅっとお上げになって驚きをお示しになり、あまつさえ
「あ、ども。いただきまーす」
とのお言葉をお掛けくださった。まさに身に余る光栄。
幸せのあまり薔薇色になった視界。平山さまが『ウロコダンゴ』に触れるか触れない
かのうちに、横に控えていたスタッフが東京都指定の半透明ゴミ袋にしか見えないもの
にそれを放り込んだ気がしたが、幸せ絶頂のウロコに水をさすものではなかった。
続いて握手。
タカさんが10/3の「とくばん」に出たとき夏の握手会に来た人の手が生温かかったと
いうような発言をしていた。わたくしの手も生温かかったに違いない。この言葉に
大変ショックを受けたウロコであったが、さすがは冬の北海道。待たされていた場所が
寒かったので、手は冷えきっていた。
平山さまのおみお手。この手がテープをRにするのだ。そう思うと、握手どころか触
れることすら冒涜的な行為であるような気がしてくる。ためらいがちに差し出した手を
そっと握ってくださる平山さま。
存外に華奢なその手には傷一つなく、重い物を持ったりするようには見えない。
温度は、人肌というには少し低かったように思う。さらさらとした触感であった。
いよいよ決断の時である。
「あっ…」
さあ、ウロコダンゴ、頭かアゴか?
「あ…」
「アゴヒゲは平山さまの主成分だぞ」という声と「お前にアゴに触る勇気があるの
か」という声が錯綜する。早くするんだウロコダンゴ!!
「あたま、触っていいですか?」
ウロコにはやはりできなかった。わずか数mmしかないアゴヒゲに触るということは
平山さまの肌に触れるも同じ。そんなことは…できない。
「どうぞ」
嫌な顔一つせずに、頭をこちら側に傾け遊ばす平山さま。
こんなこと、やっちゃっていいのだろうか。触った途端、天罰が下って雷が振ってき
たりして。
半ば本気でそんなことを考えつつ手を伸ばすウロコ。
ぱふ ぱふ
雷は振ってこなかった。その代わり、極上の水鳥の羽根に触れたが如き柔らかな感触
が掌に返ってきた。
柔らかい。細い。
とても人間の髪の毛とは思えない。限りなく高貴な天上の物質のようだ。
平山さま。あなたは本当に人間ですか?
本当はお人形なんじゃないですか?
タカさん辺りが骨董屋さんから見つけてきたんじゃないですか?
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