×××××××××× 路地裏のタコス売り・番外編 ××××××××××
| 「Can you make me happy?」 |
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「久しぶりだね、キョウコちゃん」 にこにこと笑う彼は、白のスーツをきっちり着こなしていた。前回の事件のときのラフな装いとは、まるで印象が違う。 「店長を任されることになったんで、一応それらしい格好をしてみたんだけど・・・」 似合わないかな、とつぶやくのに、ぶんぶんと首を振って否定の意を表す。 「カッコイイですよ〜、見違えました」 「さんきゅ。今日はわざわざ来てもらっちゃって、ごめん。でも、どうしてもここでパーティーを開きたかったんだ」 そう言われて会場を見渡すと、剥き出しのコンクリートの一部に深紅のじゅうたんが引かれており、その上には白い丸テーブルと椅子がいくつか並べられていた。 「オープンまであと2週間ぐらいあるから、内装がまだまだできてなくて殺風景なんだけど」 私たちが話している間にも、ナルイとオオハラが更に数台のテーブルや椅子を運び入れ、ハンダとタカクはカメラをセッティングしていた。大きなカゴに食器を入れて持って来たのは、シュウだ。 どうやらホームパーティーほどの規模らしいが、新店舗で行うって事は開店の前夜祭みたいなものだろうか。それともTNカンパニーと神波グループの親睦会? で、私はそれを取材すれば良いのかな?? 無意識のうちに首を傾げる。 「このお店のことを記事にしろってことですか?」 「いーや、今回はキョウコちゃんが主役だから」 「ええっ?」 私が困惑していると、CAさんがボストンバックを抱えてやって来た。 「向こうの準備ができたから、キョウコさん借りてくわね」 ジェリーさんにそう断ると、私の右手をつかんで歩きだす。半ば引きずられるような状態になる私は、慌てて抗議する。 「ちょ、ちょっとCAさん! 私まだ何が何だか分からないんですけど、どこ行くんですか?!」 「控室に行って着替えてもらうだけよ。今夜の主役がジーパンにTシャツじゃ、あんまりでしょう」 「でも私、着替えなんか持って来てないですし・・・」 するとCAさんは、ふっ、と意味深な表情を浮かべた。 「私たちの計画に手抜かりはないって、まあ見てもらえば分かるわね」 そう言いながら厨房のわきを抜け、恐らく更衣室になるのであろう部屋のドアを開ける。と、そこには・・・。 「どっ、どうしたんですか、これ?」 どこから持って来たのか等身大のマネキンが、ペールグリーンからダークグリーンまでの見事なグラデーションの、華麗かつ爽やかなドレスを纏って、立っていたのだった。 上半身はチャイナ服風のデザインでコンパクトにまとめられ、色も収縮色の深緑。腰から下はふんわりとボリュームを出したロングスカートで、ありとあらゆる緑色のオーガンジーを重ねてできており、絶妙な色使いと透け感が涼やかである。 「マネキンはテレビ局の倉庫から借りて来たの。ドレスは手作りよ。正確に寸法を計って作ったわけじゃないから、あとで多少の補正は必要だと思うけど」 「作ったんですか? CAさんが?」 「いいえ。ノリヒトさんよ」 私は漠然と予想していた答えに驚きはしなかったが、呆れた。 素人目に見てもこのドレスの出来栄えが並じゃないことぐらい分かる。でも、それを成し遂げたのがあの人だと思うと・・・複雑な心境だ。相変わらず、食えない人だと思う。 CAはそんな私の気持ちに気づいているのか、いないのか。それ以上は詳しく語らず、入り口とは違うもう一つの扉を、シャワールームだと言って指し示した。 「シャンプーとかはこれに入ってるから、とにかく汗を流して来て。あんまり時間がないから急いでね」 ご丁寧にボストンバックからお風呂セットを取り出して渡してくれる。その際、バックの中に靴やら化粧道具やらが見えた。どうもトータルで準備してくれてるらしい。 「それじゃ、行ってきます」 もはや質問する気も失せた私は、言われたとおりシャワールームへと足を踏み入れた。 結局。言われるままにドレスに着替え、髪をアップにまとめてもらい、メイクまで手伝ってもらった。何だか納得いかないけど、CAも私がシャワーを浴びている間にピンク色のスーツに着替えていたし、パーティーに出席するためだと思えば仕方ない。 ちなみに、ドレスのサイズは計ったわけでもないのにピッタリで、直す必要はなかった。やはりノリヒト恐るべし、である。 「それじゃあ、会場に行きましょう」 CAの言葉に私はそろそろと足を踏み出した。慣れないヒールなので転ばないように気をつけなくてはならない。 廊下に出ると、斜向かいにある、やはり更衣室らしい部屋が少し騒がしい。 「職人の皆さんも着替えてるんですね」 「ええ。もうすぐパーティーが始まるから」 「でも、お料理何かはどうするんですか?」 話しながら厨房の横を通るときに覗いてみると、下ごしらえのできた材料たちとともに、平山の姿が見えた。 彼はさっき会ったときと同じ、黒のメキシカンスタイルである。 私たちに気づいて、片手を挙げた。 「今日は私が裏方なんですよ。パーティー、楽しんでください」 ということは、調理はすべて彼が受け持つということなのだろう。 「そうめんタコスとか、また出るんですか?」 まさかスイカタコスは開発してないだろうな、とちょっと心配になってしまう。 平山はにやり、と人の悪い笑みを浮かべた。 「それは秘密です」 うーん。どんなタコスでも彼が作る限り不味くはないだろうし、そう変なものをCAさんが許可するわけないか。 私はそう思うことにして、平山に手を振り、厨房を後にした。 ホールはさっきより照明が絞られ、真ん中のじゅうたんが敷いてある所に、スポットライトが当たっていた。 中央の少し大きなテーブルに座っていたジェリーさんが、立ち上がって私たちを迎えてくれる。 「すごい、キレイだね」 椅子を引きながらそう言うので、私はドレスの裾をつまんで持ち上げ、ありがたくその席に座らせてもらった。 「うん、キレイでしょ〜。このドレス、ノリヒトさんが作ってくれたんだって。髪やメイクはほとんどCAさんにやってもらったんだよ」 苦笑するCA。ナプキンをふわりと広げて私のひざに乗せてくれる。 「ジェリーさん、ちゃんと面倒見てあげてね」 まるで私が子どもであるかのような扱いである。 でも実際、ドレスを着ているのは窮屈で、行動しにくい。食器とかタコスとか取ってもらえると、とても助かる。 「それじゃ私は、ドレス汚さないように気をつけます」 クリーニング大変そうだし。改めてドレスを見ながらつぶやく。 すると、背後から突然反論が。 「そんなの気にしなくて良いのに。主役はしっかり楽しんでくれればそれで良いの」 振り返ると、いつの間にかスーツに着替えたノリヒトが立っていた。 しかしその姿はどう見ても七五三・・・。スーツに着られてしまっている。しかもその背には見覚えのあるワニのぬいぐるみが。 「ヨシコさん、汚れてしまわない?」 CAの言葉もどこ吹く風。ノリヒトはヨシコを私の正面の席に座らせると、自分はその隣りに腰を下ろした。 「ヨシコもお祝いしたいって言ってるもん」 「そう・・・」 私の両隣にCAとジェリーさんが座り、ノリヒトと一緒にやって来ていたジュンイチが、ヨシコとジェリーさんの間に。 つまりこののテーブルには、私から順に時計回りに、CA、ノリヒト、ヨシコ、ジュンイチ、ジェリーさんの6人(というか5人と1ぬいぐるみ)が座っているわけだ。 やがてガヤガヤと他の職人たちもやって来て、3人ずつ2つのテーブルに別れて席に着いた。 「それでは、まずはTNカンパニーと神波グループの結束、及びタコス新店舗オープンを祝して、乾杯!」 ジュンイチさんの音戸で、皆がワインやらビールやらの入ったグラスを触れ合わせた。ヨシコの前にまで赤ワインが注がれている。 平山がタコスが山盛りの皿を載せたワゴンを押して来た。 プレーンタコスの他に、カレータコス、麻婆豆腐タコスなんてのもある。デザートのプリンタコスはホシノがほとんど一人で食べ尽くしてしまった。 「これって全部この店で出すんですか?」 私はかなり不安になってジェリーさんに小声で尋ねた。いや、別に不味い訳ではない。ただ、あまりにもタコスという概念から外れてしまっているような気がして。 「まさか。こんなタコスを成立させられるのは平山さんだけだよ。オレや他の職人たちには真似できない。この店では、多少のバリエーションは持たせるけど、オーソドックスなタコスを出す予定なんだ」 だから、キョウコちゃんも友達と一緒に来てくれよ、と言われて大きくうなづく。その大袈裟な反応に自分でもびっくりした私は、すっかりタコス好きになっちゃったんだなあ、と感慨深く思った。 「それでは本日のメインイベント!」 パーティーが始まってから1時間ほどした頃、ジュンイチが叫んだ。 ちょっと酔っ払ってるらしく、ろれつが回っていない。 「平山の自信作、登場っ」 バーン、と音を立ててドアが開かれ、平山が現れた。手には大きな皿。しかしその上はフランス料理店で使われるような大きな銀の覆いが被せられていて、中に何があるのかは分からない。 ライトが更に落とされ、中央のテーブルを照らすスポットライトのみになった。 平山が皿を私の目の前に置くと、ハンダがカメラを片手に駆け寄る。 「な、何ですか?」 驚く私にジェリーさんが告げる。 「ちょっとだけ、目をつぶってて。オレが良いって言うまで目を開けちゃ駄目だよ」 「はあ・・・」 そして数十秒。いや、本当はもっと短かったのかもしれないけど、ドキドキして待っていた私には、正直なところ、数分の長さにも感じられた。 がさごそと、職人たちもテーブル近くに集まって来ているような雰囲気。 「うん、出来た」 ノリヒトの声。それを受けてジェリーさんが私の肩をたたいた。 「それじゃあ、キョウコちゃん、目を開けて良いよ」 最初に目に入ったのは、ぼんやりとした光。 やがて目が慣れてくるとそれがロウソクの灯だってことに気づく。 ライトがほとんど消された室内に、浮かび上がるのはホットケーキのような物体と、その上に立てられた数本のロウソク。 よく見るとそれは円盤状の物体は・・・。 「イチゴタコス?」 私の言葉に平山が頷く。 「デコレーションケーキをイメージして作りました。イチゴと生クリームをタコスの皮で巻き、それをいくつか並べて上下をイチゴムースでサンドしてあります。タコスだけでも良いと思ったんですが・・・」 「やっぱり、誕生日にはバースデーケーキだろ?」 ジェリーさんが後を引き取って言った。 「今日、6月26日」 そうして、いたずらっぽく笑う。 「ハッピーバースデイ、トゥ、キョウコ」 「ジェリーさん・・・私の誕生日知ってたんですか?」 自分でも、忙しさにかまけて忘れていたというのに。 じーん、と感動していると、すっかりできあがってしまったらしいジュンイチがジェリーさんにからんで来た。 「おいこら、二人の世界作ってるんじゃねーぞぅ。計画立てたり、会場作ったり、こっちだって頑張ったんだからなー」 「あ・・・、皆さんも、ありがとうございます」 慌てて職人たちに頭を下げる。 「それじゃ、まずは記念撮影しようぜ」 ハンダが三脚の上にカメラを乗せ、全員をイチゴタコスの前に集める。タイマーをセットして撮ること3回。ハンダ自身がカメラを構えて数人ずつ撮ること、たぶん数十回。 私は途中までしかカメラの様子を追えなかった。 何故なら、ジェリーさんがイチゴタコスを取り分けてくれたので、私は「不可能を可能にする」職人芸を心から堪能していたのである。 イチゴタコスは、ムース部分も含めて、甘すぎず、くどすぎず。本当においしかった。 「おいしいです〜」 素直に感想を伝えると、平山が満足げに笑った。 「CAに言われて、急いでイチゴを買いに行った甲斐がありましたよ」 なるほど、「あれがないと困る」ってのは、イチゴのことだったのか。 「キョウコさん、たくさん食べてくださいね」 CAはそんな言葉を残し、平山を手伝って、取り分けたケーキの一部を他のテーブルへと運んで行った。 一人暮らしを始めてから、こんなに素敵な誕生日は初めてだ、と思う。 確かにタコス事件に巻き込まれたときは迷惑だったけど、被害者とは言え赤の他人の私にここまでしてくれるなんて、やっぱりいい人たちなんだ。 イチゴタコスを食べながら、大騒ぎをしている彼らを眺める。 このホールを今日使えるよう手配してくれたのは、たぶんジュンイチなんだろう。実際に会場を作ってくれたのは、職人たち。ドレスを作ってくれたノリヒト、メイクなどを担当してくれたCA、タコスを作ってくれた平山。そして一番最初に計画を立ててくれたのは・・・。 「何? 取ってほしいものとか、あった?」 ちらっと横目で見たことに気づいたのか、ジェリーさんが尋ねた。 「ううん。・・・っと、あえて言えばバースデープレゼントが欲しいかな」 ま、これは調子に乗り過ぎだけどね。 私が冗談まじりに言うと、ジェリーさんは真面目な顔になって、ささやいた。 「あるよ、プレゼント」 「え?」 ジェリーさんはさっと職人たちに目をやり、彼らがケーキや酒に夢中でこっちを見てないことを知ると、スーツのポケットから小さな箱を取り出した。 開けると、シルバーのリングが控えめな光を放っている。 「これ、私に?」 「うん。虫よけで良いから、付けて欲しい」 は? これって虫よけ機能付きな指輪なのかな。そんなの聞いたことないけど。 私はジェリーさんの言葉に疑問を覚えつつも、小箱を受け取る。 銀色に光るリングは、質素とも言えるほどのあっさりしたデザインだけど、だからといって安いわけでもないだろう。 「こんな高そうなもの、もらえませんよ〜。それに彼女とか怒りますよ、きっと」 その言葉に憮然とするジェリーさん。 「彼女なんかいないよ。それに、これはキョウコちゃんのために買ったんだ」 恋人がいないってのは、もしかしてまずいとこ突いちゃったのかもしれない。 ジェリーさんの不機嫌そうな顔を見て、私は焦った。話題を変えなくては、と慌てて口を開く。 「えっと、じゃ、じゃあジェリーさんの誕生日教えてください。絶対そのときにお返ししますから」 「お返しって、バレンタインじゃないんだから・・・」 苦笑しつつも、教えてくれる。 「わっかりました。それじゃ、今日は飲んじゃいましょう」 彼女がどうの、という発言を思い出されないように、私は飲ませる作戦に出た。 ダバダバとワインをグラスに注ぎ、自分でも景気づけに一杯あおる。 もらった指輪は、無くさないうちに、指にはめることにする。・・・っと、右の薬指には入らないや。左手でいっか。うん、こっちにはサイズがピッタリ。恐るべし、ジェリーさん? 「ちょ、ちょっとキョウコちゃん、そんな飲み方したら駄目だって!」 ジェリーさんの声がほわん、と遠くに聞こえる。 でも私は手にしたイチゴワインがおいしかったので、もう一杯グラスに注いでしまう。 イチゴタコスもイチゴワインもおいし〜。すっごい幸せ〜〜。 私はふわわーん、とした酔いに、身を任せた。 目が覚めたとき。 私はいつも通り自分の部屋の、自分のベッドの上にいた。 あれ? 起き上がって自分の体を見渡す。いつの間にかパジャマ着てるし。髪がちょっとごわごわするところからして、昨日、お風呂に入らず寝ちゃったのかな。 ん? それにしちゃ汗くさくない。 調べてみると、脱衣所のカゴの中に昨日着ていたジーパンとTシャツが入っていた。 ええっと、昨日は「恋人実態調査」とかいう仕事やってて、帰って来たのが夕方で、夕日に照らされて屋台・・・って、ああ! 誕生日パーティーしてもらったんだ。 その時、ピンポーンとチャイムが鳴った。 ドアについてるレンズから確認すると、高校時代からの腐れ縁の、友人たち。 「ごめん、今パジャマなの」 ちょっと待って、と謝ると意外な答えが返って来た。 「知ってるよ〜、朝帰りのキョウコちゃん」 とからかうような口調なのはヒロミ。 「昨日の夜、ってーか今朝未明か、ジェリーさんから電話かかって来て、大変だったんだからね」 私はまだ実家に住んでて、そうそう夜中に出歩けないんだから、と文句を言うのがケイカ。 「酔っ払って正体なくしちゃって、タクシーで送ろうにも夜中じゃ近所の目があるし、第一ちゃんと寝られるか、廊下で倒れたりしないか心配だって。いい人だよね〜」 「でも他人の迷惑は二の次なんだよな」 そんなトークを玄関前で始められてしまっては、パジャマが恥ずかしいとか言ってる場合ではない。 私は仕方なく玄関を開けた。 お邪魔しまーす、と一応断って入ってくる二人。それぞれ手にはコンビニの袋。 「朝ごはん買って来たよ。二日酔いの薬も持って来たけど、それは要らないみたいだね」 「あれだけ酔っ払っといて、朝にはけろっとしてるんだから、ズルイよな。まあ元気だって報告すればジェリーさんも安心するか」 そこで、私はやっと問題点に気づいた。 「・・・何でジェリーさんと知り合いなの?」 その言葉に顔を見合わせるヒロミとケイカ。何やら言いずらい様子である。 嫌そうな顔をして、ケイカが口を開いた。 「1週間ぐらい前、仕事帰りにうわさの屋台に出会ったんだよ。何でも、キョウコのことを知るために、実家周辺に出没してたらしい」 キョウコとケイカの実家は歩いて10分の近さである。 「まあタコス騒動のことはキョウコから聞いてたし、ヒロミも巻き込んでいろいろ情報流したり、協力したわけ」 それでジェリーさんが私の誕生日を知っていたんだ。全く、回りくどいことするなあ。直接聞いてくれれば良いのに。 「それにヒロミも・・・」 更にケイカが言い募ろうとするのを、ヒロミが慌てて止めた。 「私のことは関係ないでしょっ」 「あのワニ背負ったちっちゃい人・・・」 「ノリヒトさん! 名前覚えなさいよ」 「今回なんか七五三みたいだったよね〜」 「うっさいわね、可愛いじゃないの!」 何やら騒がしくなって来た。 時計を見ると、朝の7時。そろそろ仕事に行かなくてはならない時間だ。フリーとは言っても、サボっていて良いはずがない。 私は掛け合い漫才みたいなものを横目に、黙々と朝ごはんを食べて家を出た。もちろん、友人二人も一緒に追い出す。 「何かよく分からないけど、昨日はご迷惑おかけしました」 一応、ぺこりと頭を下げる。 「良いよ、それは。今度ジェリーさんの店に連れてってね」 ヒロミが言うとケイカが口を挟んだ。 「<ナスのヘタ>はいるのかしら」 ヒロミ、無言でにらむ。 「ん? それじゃ、仕事行ってくるね」 私はとにかく手を振って、歩きだした。 その左手に光るのは、シルバーのリング。 「キョウコ、あの指輪の意味、わかってんのかな?」 「虫よけ機能付き、とか言ってたよ、寝言で・・・」 残されたヒロミとケイカは、他人事ながらその前途多難さに頭を抱えるのだった。 |
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