もうすぐ辿り着く baby, your my home...


帰ろうまっすぐ君の胸に


 


 

 



baby,your my home

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月齢15。大きく肥大した月は、闇に沈む森を飲み込まんとするかの如く、 視界一杯に広がり、僅かに草木の折れ曲がった痕跡でそれと知れるけもの 道を明るく照らす。

男は、満月へと向かって、薮の中を進んでいた。
はあ、はあと荒い呼吸は、本来の男の姿とは違っている。
忍の中でも、ずば抜けたエリート、元暗殺戦術特殊部隊所属だった上忍 が、通常はその額当てによって隠されている、異形の瞳、燃え盛る炎の様 な色をした左眼を露にしたままでいる。
見れば、その忍装束には、幾重にも散る血飛沫に濡れ、ジャケットは元 の色が判らぬ程にどす黒く染まっている。一人や二人の物ではないだろう 量の返り血を浴び、死臭を漂わせ、はたけカカシは、月へ、否、自分の里 である木の葉隠れの里へと向かっていた。

カカシは林を抜け、僅かに開けた丘にでた。
ここから、木の葉隠れの里までは三里もない。見晴らしの良い其処から、 木の葉隠れの里の物と思われる、灯りがちらちらと滲んでみえた。
ぽっかりと一本の木を中心に残して、芝の様な短い雑草が円を描くよう に開けた其処の、真ん中に一本だけ生えている巨木にカカシは手をつき、 息を吐いた。

僅かな揺れを感じたのか、木ははらりと一片の花びらをカカシの元へ落 とした。腕に貼りついた小さな白い一片をカカシは手にする。
青白い月明かりで、真白に見える其れは、桜の花びらだった。
カカシは感覚のない手のひらに、其れを握らせた。

過去に一度、此処へ来たことがある。
サスケ、ナルト、サクラを伴った任務で、隣の里へのお使いに行く道す がらこの場所へ立ち寄ったのだ。当時は晩春で、今、手をついている大木 は見事な花を咲かす事で有名な桜だったが、時期を逃した為殆どその花は 散っていて、サクラが悔しがっていた。今度、また皆で来ようか、と言っ てその約束はまだ、果たしていない。

あと、少し、そう思って、一歩踏み出そうとしたが、バランスを崩した カカシは膝から崩れ落ちた。
どさり、と重い音を立てて、木に寄りかかるようにして座り込む。
肩で息をつくカカシの、左腕は肩から砕かれ、だらりと垂れ下がってお り、指先の感覚はとうに失われていた。
右手で、顔の半分を隠していた覆面を引き摺りおろし、ようやく新鮮な 空気を肺一杯に吸い込む。
春とは言え、深夜の森の中である。空気は冷え切って刺すような温度に、 肺は驚き、げほげほと二、三度大きく咳き込んだ。
月あかりに照らされて見るカカシの顔は、衣服だけでなく、顔にも血が 点々と散り、壮絶な戦いの跡が明らかだ。
疲弊しきり、血の気の引いた顔は、それでも口唇の端をもちあげ、シニ カルな笑いを浮かべる。
「………は、まいったな……」

すっかり、身体がなまってきてるな、と自嘲した笑いを浮かべる。

余裕なんてある筈も無いのだが、それでも、今まで経験してきた修羅場 の数は、男の身体に染み付いていて、鍛えられた精神力は、笑う事を可能 にするのだ。

カカシは、火影の命を請け、暗部から退いた身であったものの、単独で の潜入、暗殺の任務を果たした。
一線から退いたとはいえ、火影をも凌ぐ能力の持ち主であるカカシであ る。ときたま、このように火影から間を通さない、機密を孕んだ任務を受 けることがときたまあったのである。教師、という職についてからもこう して呼び出しを受け、秘密裏に任務を遂行することもままあった。


(ここで、のたれ死んだら、どうするかな……)

ぼんやりと、月を見上げるれば、先程と変わらない、飲み込まれるよう に大きな月。

何時もよりも酷く大きく見える月は、自分を飲み込んでゆくようで、満 身創痍の身体に眩い程の光が降り注ぐ。


帰ろう、里へ。
帰ろう、君の元へ。

はやく、はやく……

再び、帰路へと目を向け、立ち上がろうと膝に傷ついていない方の手を つくが、力が入らず、背は木に貼りついたように動くことがままならない。

「っっ…っげほっ」
咳こんだ途端に、身体中が軋みをあげる。僅かな衝撃にも、割れ鐘を叩 いているかのように頭が傷み、節々は鈍い痛みを伝える。

「はは、やべ…血ィ、足んないかも……」



死ぬことを恐れている訳ではなかった。

今まで、何人も、何十人、いやもっと多くの命をその手で絶ってきたのだ。
今更、己の命を惜しむことに、どれほどの価値があるのだ。


何時、自分が死んだとしても、それは、己の業が返ってきた、ただそれだけ。

みっともなく生にしがみつくような真似はする気はないけれど。


ただ。


ただ……………



あの子を残し、逝くことは。


サスケ、サスケ。

縁を持つもの、壊れる事の無い愛情を与えてくれる者全てを愛する存在 の手によって奪われ、永遠に失い、幼いその背に、哀しい宿命を背負う少年。

人を慕う感情を知らなかった彼を、でき得る限り、愛せる限り、愛して、 慈しんで。

泣かせた事もあった。誰も知らない、笑顔をくれたこともあった。

ようやく、凍らせていた心を溶かし、年相応の笑顔を見せてくれるように なったのに。


俺が、死んだら、また、殻に篭ってしまうのだろうか。
昔のように、また部屋の片隅で、声を殺して、涙さえ流さず、ただ、とて つもなく重い運命を呪うこともなく、その小さな身体で耐えるのだろうか。

笑顔を失わせてはしないだろうか。


君の心に入りこめた事は、嬉しかったけれど。


愛してると囁いて

何度も、何度も。

俺が居なくなった時に

君はその言葉を、偽物だと思わないだろうか


伝えた想いを、否定しないで





誰よりも愛しているから





君を愛する、他の誰の想いも、

否定しないで


「……かえろう」

カカシは、笑みを浮かべたまま、そう呟き、木の葉の里の灯りを見つめた。 暗闇が、視界の端から侵食してゆく。うつろな意識で、幾つもの光の粒の中 から、一つの光を、サスケの家の灯りだと、根拠のないものの、確かな確信 を持つ。

さあ、早く。あの子が泣かないように。



ざあ、と一陣の風が舞い、桜の花びらが舞い上がった。

重力に従い、地面に、草の上へと落ちたカカシの手のひらから、握ってい た花びらが、音も無く零れ落ちていった。













物音がした気がした。

外に誰かの気配を感じ、サスケは玄関へと向かった。

「カカシ?」
軋むドアを開け、サスケが顔を覗かせる。

辺りを見回すが風が木々をざわめかすただそれだけで、戸の向こうには 誰も居なかった。

黒い瞳を少し、訝かし気に眇めると、サスケはそっと扉を閉じ、一人中 へ戻っていった。



帰ろうまっすぐ君の胸に
柔らかな香りに誘われて

僕らは抱いて抱かれて歩いているよ
流れる星を見よう baby, your my home


帰ろうまっすぐ君の胸に
灯りを見失わないで

僕らはこれからきっとうまく行くよ
もうすぐ辿り着く baby, your my home...




終。


カカシ殺してどうするんですか私。アンハッピー<てか、人が死ぬもの。 限りなく弱い。すぐ泣く。しかも無意味な処で。は大嫌いですが、 ラストの幸せそーに笑いながら死んでくカカシの姿が落ちてきた んです。そこんとこうまく書けへんでイライラしたので割愛。夏コミ へ向かう夜行バスの車内。いや違うな、もちっと前だったかも。
とにかく、ロンリー移動中ってやたらセンチメンタル俺、になっ てしまって、下手に不毛なネタがボッコボコでてきます。マイッ チング。

桐生さんへ。
こ、こんなんでましたけど。いいのかしら。よくねえよ・・・・・・・・。
いっつも暖かいお言葉ありがとうです。。。桐生さんの一ファンと して感激です。泣。相変わらずの恩仇ですけど、これからも宜しく してやってください。。。。。嫌か。(アイタタ)




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