帰ろうまっすぐ君の胸に
|
baby,your my home *************
男は、満月へと向かって、薮の中を進んでいた。
カカシは林を抜け、僅かに開けた丘にでた。
僅かな揺れを感じたのか、木ははらりと一片の花びらをカカシの元へ落
とした。腕に貼りついた小さな白い一片をカカシは手にする。
過去に一度、此処へ来たことがある。
あと、少し、そう思って、一歩踏み出そうとしたが、バランスを崩した
カカシは膝から崩れ落ちた。 すっかり、身体がなまってきてるな、と自嘲した笑いを浮かべる。 余裕なんてある筈も無いのだが、それでも、今まで経験してきた修羅場 の数は、男の身体に染み付いていて、鍛えられた精神力は、笑う事を可能 にするのだ。
カカシは、火影の命を請け、暗部から退いた身であったものの、単独で
の潜入、暗殺の任務を果たした。
(ここで、のたれ死んだら、どうするかな……) ぼんやりと、月を見上げるれば、先程と変わらない、飲み込まれるよう に大きな月。 何時もよりも酷く大きく見える月は、自分を飲み込んでゆくようで、満 身創痍の身体に眩い程の光が降り注ぐ。
帰ろう、里へ。 はやく、はやく…… 再び、帰路へと目を向け、立ち上がろうと膝に傷ついていない方の手を つくが、力が入らず、背は木に貼りついたように動くことがままならない。
「っっ…っげほっ」 「はは、やべ…血ィ、足んないかも……」
今まで、何人も、何十人、いやもっと多くの命をその手で絶ってきたのだ。
みっともなく生にしがみつくような真似はする気はないけれど。
ただ。
ただ……………
あの子を残し、逝くことは。
サスケ、サスケ。 縁を持つもの、壊れる事の無い愛情を与えてくれる者全てを愛する存在 の手によって奪われ、永遠に失い、幼いその背に、哀しい宿命を背負う少年。 人を慕う感情を知らなかった彼を、でき得る限り、愛せる限り、愛して、 慈しんで。 泣かせた事もあった。誰も知らない、笑顔をくれたこともあった。 ようやく、凍らせていた心を溶かし、年相応の笑顔を見せてくれるように なったのに。
笑顔を失わせてはしないだろうか。
愛してると囁いて 何度も、何度も。 俺が居なくなった時に 君はその言葉を、偽物だと思わないだろうか
誰よりも愛しているから
君を愛する、他の誰の想いも、 否定しないで
「……かえろう」
カカシは、笑みを浮かべたまま、そう呟き、木の葉の里の灯りを見つめた。
暗闇が、視界の端から侵食してゆく。うつろな意識で、幾つもの光の粒の中
から、一つの光を、サスケの家の灯りだと、根拠のないものの、確かな確信
を持つ。
さあ、早く。あの子が泣かないように。
重力に従い、地面に、草の上へと落ちたカカシの手のひらから、握ってい た花びらが、音も無く零れ落ちていった。
外に誰かの気配を感じ、サスケは玄関へと向かった。
「カカシ?」 辺りを見回すが風が木々をざわめかすただそれだけで、戸の向こうには 誰も居なかった。 黒い瞳を少し、訝かし気に眇めると、サスケはそっと扉を閉じ、一人中 へ戻っていった。
帰ろうまっすぐ君の胸に 柔らかな香りに誘われて
僕らは抱いて抱かれて歩いているよ
僕らはこれからきっとうまく行くよ
終。
カカシ殺してどうするんですか私。アンハッピー<てか、人が死ぬもの。
限りなく弱い。すぐ泣く。しかも無意味な処で。は大嫌いですが、
ラストの幸せそーに笑いながら死んでくカカシの姿が落ちてきた
んです。そこんとこうまく書けへんでイライラしたので割愛。夏コミ
へ向かう夜行バスの車内。いや違うな、もちっと前だったかも。
桐生さんへ。
|