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右手
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「・・・・・・」
気づいてしまったのは、いつからだろう。
目の前のこの少年が人と触れ合う事が苦手だと。
「ねぇねぇサスケくん・・」
今もまた、好意を露にした少女の手は振り払われる運命にある。しかし
その瞬間、誰より傷ついた目をするのは、少年の方なのだ。
「何々〜!?サクラちゃんの手作り??」
サクラの手から弁当の包みが地面に落とされる一瞬手前、ナルトが二人
の間に割り込んだ。
「あ、ちょっとナルト!!それはサスケくんに・・・・ああンもう!!」
サスケとサクラが呆然としている内にナルトはサクラの包みを開き・・・・
「バカナルト!!もー何してるのよぉ!!」
「このエビフライうま〜い!!」
「そりゃあそうよ。だってそれ一尾198円もする・・ってあんたねぇ!!」
図らずも、ナルトによって危惧した事態は空振りに終わってしまった
ようである。
「・・・・何なんだ・・・・」
弁当をパクつくナルトと、ナルトをドツくサクラの二人からテクテクと
離れるサスケに
「ハハ、せっかくサクラがお前の為に作ったってのに、あの弁当」
とカカシがイチャパラから顔を覗かせて軽口を叩くと、ジロリと睨みつ
けられ
「知るか。そんなの頼んじゃねぇ」
フン、とサスケは顔をそむける。
「ただの好意なんだから有り難く受け取れば?」
何時もおにぎりばっかじゃ栄養偏るぞ?と指摘すれば
「・・・・・・・・・・」
アンタだっていつもいつもほか弁じゃねぇか、と心中でツッコミを入れ
るサスケに
「俺はちゃんと違う内容のおかずだぞ」
とサスケの横顔に貼りついたその意図を汲んで笑う。そしてカカシは
するりと手を伸ばした。
「バカバカしい・・っっておい」
サスケが慌てた声をあげた。抗議するも軽々と抱き上げられて、すと
んとその小さな身体はカカシの座る丸太の間に据え置かれてしまった。
「何してんだよ!」
「んー。スキンシップ?」
「バッカ!放しやがれ!!」
ジタバタともがく少年をいとも簡単に身動きの取れない様抱きすくめ
てサスケの黒い頭の上に顎を載せて再び手元の本に目を移す。
「何考えてんだ・・畜生」
ぶすっと頬を膨らませて、どれだけ目一杯暴れてもビクともしないカ
カシに、サスケはようやく諦めたのか、渋々、本当に渋々、大人しくなっ
た。
「ちょっと二人共!何やってんのよ!!」
二人に気づいて目くじらを立てるサクラに、俺だって知るか!とサス
ケも怒鳴る。ナルトはナルトで何を思ったか、なんだよサスケずりーぞ!!
とカカシの背に飛びついてじゃれる。
「あいたた、重たいぞナルト」
「ぐえっ!クソ!このウスラトンカチどもが!!」
カカシを挟んでナルトの体重をもろに受けたサスケが身体を折って唸る。
「もーナルトまで何してんの!!」
男って判らないわ、と呆れ顔のサクラが、ペシッとナルトの頭を叩いた。
「えーいーじゃんよー!!」
うししっと笑ってカカシの背中に乗っかるナルトに、
「スキンシップは大事だぞー。けど、お前重いって」
と覆面の下で笑うカカシの顔が、息が、頬にかかったサスケが横目で見
上げる。
どくり、と心臓の音が聞こえた。
サスケにとって、父親も、母親も、兄貴もなくしてから、誰かの体温を
感じたり、誰かに触れたりする事は殆どなかった。
他人との接触なんて、無くして久しい。
だから、慣れない。
「・・・・しろ」
「え?」
カカシがキョトンとサスケを見やると
「いい加減にしろ!」
目一杯、手加減無しでカカシと、ついでにナルトもはじき飛ばしてサス
ケはタタッと駆け出した。
「ってー。サスケ!てめー・・・・?」
「サスケくん!!」
「・・・・・・あちゃー」
勢い余って丸太すら滑り落ちて後頭部をしこたまぶつけたナルトに、唖
然としてサスケが走り去っていった方向を見つめているサクラに、此処で
待ってなと告げてカカシはサスケを追いかけた。
「ハァ・・・・・・ハァ、ハー・・」
ザァ、と周囲の木々の葉が風に舞う。
勢いに任せてすっかり奥の方まで来てしまった。
場所の見当もつかない林の中で、側の木に手をついてあがった息を落ち
着かせる為、サスケは数度深呼吸をした。
(何処まで来たんだろ・・)
辺りを見回しても、居場所が解る様な物は何も無くて、とりあえず元来
た道を帰ろうと、振り返り、テクテクと歩き出した。
しかしどう言って、皆の元に戻ればいいのだろうか。
(何だってこんな嫌がったとか・・・・・・・追求されちまうかな)
「ああクソ」
(元はと言えばカカシの野郎が妙な事しやがるから)
嫌じゃない・・・・・・けど、どうしていいか解らない
眉を寄せて、かああと頬を火照らせて、ずんずんと歩を進める。
「あ、居た」
「?!」
よう、と気づけば目の前にカカシが立っていた。
「何しにきた」
唸り、警戒心を露にしてしまうのに、人付き合いに慣れていない所為で
ある事をとっくに見抜いているカカシには全く威嚇にもならない。
「何って突然人跳ね飛ばして謝りもせずに逃げちゃった目の前のお坊ちゃ
んを迎えに」
「お前が無理矢理羽交い締めにするからだろーが」
「まーその通りだけどね」
ハハハと笑うカカシにサスケの額に青筋を浮く。
「でも、迎えに来てもらわなくちゃ、バツが悪くて戻ってこれないでしょ」
さらりと笑うカカシに、サスケは押し黙って俯いてしまう。
「・・・・・・・・・・・・・」
「ホラ」
とカカシが右手を差し出すが、サスケはバシッとそれを叩く。
「うるさい」
「・・・・ったくお前ね・・」
少しは素直になりなさいよ。
カカシの言葉に、俯いたままのサスケの顔が紅潮した。
「煩い!!あんたには関係ない!あんたなんかに言われたくない!!」
あんたは・・いつもいつも何だって判ってるって顔して、飄々として・・むかつくんだよ!!
いつだって余裕たっぷりで、大人で。
畜生・・ちくしょう・・。
「サスケ?」
カカシの声でハッと我に返る。
サスケは自分の頬に熱い物が伝っているのに気づいた。
「・・え・・?!」
手をやり、触れた雫にようやく涙だと気づく。
かあ、と顔を赤くして俯くと、ごしごしと何度も手の甲で擦る。
「・・・・まぁ、素直じゃないのがサスケくんだけどねぇ・・」
明後日の方向を向いて、カカシが呟く。
「いい加減、戻らないとナルトとサクラがふくれるぞ」
そう言ったカカシは再び、一度は振り払われた右手を差し出した。
「サスケ?」
差し出された右手を眩し気に見上げるサスケ。
おずおずと、伸ばされた小さな手を、カカシはしっかりと握る。
「んじゃ、行こうか」
こくり、と頷いて、そのまま下に向けた頬はまた赤く染まっていて、
それに気づいたカカシはそれと気づかれ無い様に目を細めた。
おわり。
ゴメンよリョータくん!!
開設祝いにカカサス戴いたお礼ですが、恩仇恩仇。
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