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旭川大学地域研究所の活動紹介

地研ニュース号外

2000年12月18日 発行

旭川大学地域研究所運営委員会

〒079-8501 旭川市永山3条23丁目

TEL (0166)48-3121(代) FAX (0166)49-2552




◆平山雄三教授(地域研究所運営委員)からのメールをご紹介します◆

平山教授は、2000年9月より一年間、ウェブスター大学ジュネーヴ校にて在外研修中、

「地研ニュース」90号に引きつづいて二度目の掲載です。

秋の風景 秋の風景

私の住んでいる近くの秋の風景を送ります。


 ご無沙汰しておりますが皆様いかがお過ごしですか。何かスイス事情をご紹介しなければと思いつつ、ついつい

今に至ってしまいました。先日10月22日(日)にローザンヌのマラソン大会に参加してきましたのでとりあえずその

ことを題材にご報告することにします。私の永山シーナにおけるランニング仲間から、ヨーロッパに行ったらぜひと

もマラソン大会に参加してその体験談を聞かせてくれと言われていたのですが、たまたま地元の新聞でローザンヌ

マラソンのことを知り、早速インターネットで私にとって初のフルマラソンに申し込んだ次第です。ローザンヌはジュ

ネーブから列車で35分ほどのところにあるレマン湖岸の国際的な観光都市ですが、その紹介は山内先生がすで

に学園報で詳しくされている通りです。マラソンのスイス選手権と銘打たれたこの大会は国をあげての取り組みの

ようで、参加費45スイスフラン(2700円程度)を払うと21、22の両日スイス全土とローザンヌ間の鉄道運賃が無

料になるという特典までついていました。ローザンヌには1917年以来国際オリンピック 委員会(IOC)が設置されて

おり、この大会は1993年にオリンピック博物館がオープンしたのを記念して創められたもので今年が8回目にな

ります。そのためか大会パンフレットの冒頭にはサマランチ会長の挨拶が寄せられていました。種目はマラソンの

他、ハーフマラソン、クオーターマラソン、インラインスケートによるハーフマラソン、車椅子ハーフマラソンなどで、

参加者は7000人を超える大きな大会でした。

 こうして10月21日(土)の早朝にローザンヌに向けて出かけました。スイス鉄道はとても快適です。線路間隔が

広く(広軌)、列車は日本に比べて大きく重量感があり、その存在感といったらまさにスイス交通の大動脈といった

感があります。改札はなく車内の鑑札職員も各駅停車の場合には稀にやってくるだけです。そのための人件費を

使うより、目的地までのチケットの購入に当然の経費を払うという市民道徳に依拠しているということでしょう。21

日には古い教会や博物館など市内を見学したあと、夕方の6時ころパスタパーティーの会場に着きました。このパス

タパーティーというのはマラソンに必要な炭水化物をパスタと言う形で補給する必要から始まった伝統的な催しの

ようです。私のイメージしていたのとは対照的に、パーティーは湖岸のテントの中で行われていました。パスタとい

っても簡素なもので、マカロニ状のパスタに簡単なソースをかけただけのものでこれを長い行列に並んで支給して

もらうわけです。会場ではケニアとエチオピアからの招待選手および前年度のスイスチャンピョンの紹介がありま

した。たまたま私の隣に居合わせた2人連れはベルギーのブリュッセルから来た人たちで、「よくそんなに遠い所か

ら来ましたね」と私が言うと、「いやそんなに遠くないんだ。500キロほどだよ。車で5時間さ。」という答えが返って

きました。後日調べてみるとその通りで、ヨーロッパというのは意外と狭いのだと認識を新たにしました。「グッドラ

ック」と声を掛け合って彼らと別れパーティー会場を抜け出して夜道を迷いつつやっとのことでユースホステルにた

どり着いたのは9時過ぎでした。ホテルの隅のカウンターで地元の人と「ジュネーブは物価が高いですね。日本の

東京も物価が高いので有名ですがそれ以上ですね」「いやローザンヌも同じだ。やりきれないよ」などと雑談してい

るうちに愛想のいい年配の一人のドイツ人と知り合いになりました。スイス国境の町から来た人で10回以上のマ

ラソン経験とのこと。「何をやっているんだい?」「コンピュータです」「それは複雑だな」「あなたは?」「私は薬局を

経営しているんだよ」「それも複雑そうですね!」「そうでもないよ」「オリンピックの金メダリスト高橋尚子を知ってい

ますか?」「もちろんだよ」などという会話を交わしました。このドイツ人 とは翌日の朝食の時も偶然一緒になりま

した。

 さてこうして翌日なんとかスタート地点にたどりついた私は、「三井マラソンツアー」と書いてある2本のノボリを目

にしました。ノボリはこれ以外ないわけですからいやでも目に入ります。いかにも日本的です。そのまわりではおば

さんたちが地元の写真記者を捕まえては一緒に写真を撮っていました。この体験は希少価値だろうと思っていた

私は多少ガッカリせざるを得ませんでした。さてスタート時間が近づいたので広場から柵の向こうの路上(スタート

地点)に出ようと柵に片足をかけて乗り越えようと苦闘していたら、誰かが後ろから手助けに背中を押してくれまし

た。あまりに強くしかも不意に押されたので、私はもんどりうって向こうの歩道に転落してしましました。3人くらいの

ランナーが駆け寄って助け起こしてくれましたが、そのうちの一人が愛想よく笑いかけるのでよく見ると、昨夜隣の

2段ベッドで大きなイビキで私を朝まで寝かせなかったオーストリ ア人でした。フルマラソンは10時15分出発でコ

ースはローザンヌからレマン湖岸を東にチ ャップリン家所有の別荘があるヴヴェイの更に先、モントルーにも近い

La Tour-de-Peilzという町のはずれで折り返し、オリンピック博物館前でゴールするというものでした。行きは右手

にレマン湖を望み、左手にはブドウ畑を目にしながらの絶景の広がる素晴らしいコースでした。この地域は良質の

白ワインの産地として知られています。私の住んでいるベルソワの町の近郊にもブドウ畑は沢山ありますが、それ

に比べてこの地域の地形は急な斜面が連続しており、そこにブドウを栽培しているのです。地形が急峻なために

ふんだんの太陽光線を受けて良質のブドウができるとのことですが、土壌の流出を防ぐために頑丈な石垣で段々

畑を作っているのです。その石垣の高さといったら身の丈の3倍はあろうかというものです。考えてみれば急な斜

面ほど高い石垣を必要とするわけですが、私はブドウ栽培にかける農民の並々ならぬ決意の結晶とも言うべき巨

大な建築物を見ているうちに、政府のコメ政策によって崩壊の危機に瀕している日本の棚田に思いを馳せざるを

得ませんでした。日本の棚田にも、先祖代々のどれほどの労働が費やされていることでしょう。

 井上ひさし氏がどこかで書いていましたが、田んぼの一枚一枚はその意味でダビンチの絵画モナリザにも匹敵

すると。モナリザはレオナルドが死の床に所有していた3枚の絵画の1つですが、彼は幼くして別れた母のイメー

ジを追い求めて長年に渡り折に触れて手を入れていたに違いありません。完全主義者のレオナルドらしい話で

す。ブドウ畑の丘の上には例外なく城館とも言うべき古い立派な建物が建っています。これを見るとスイスのブドウ

栽培農家の経済的地位が推し測れるというものです。

 さて、こうして私は時折首だけを左上に向けながら変な格好で走っていたわけですが、一つ一つの町を通過する

ごとに地元の人々の歓迎は大変なものでした。まず4,5人のミニオーケストラが沿道でカントリーミュージックのよ

うなものを生演奏して場を盛り上げてくれるのです。その周りでは地元の人たちが拍手をしながら声をかけてくれ

たり、手を延ばして握手を求めてくるのです。驚いたことに小学校の低学年に違いない小さな子供たちも沢山ボラ

ンティアで水を手渡してくれるのです。これも日本では決して見られない光景です。途中の栄養補給のテーブルに

は、水や果物が置かれているのはどこの大会でも見られる光景ですが、日本ですと水道水をコップに入れてくれる

のが普通ですが、ここでは3分の一リットル入りペットボトルのミネラルウオーターが支給されるのです。これをちょ

っとだけ飲んであとは路上に捨てていくわけですから、おびただしい数のペットボトルが路上に散乱するわけで

す。何とももったいない話です。しかし、驚くほど物価の高いスイスにあってミネラルウオーターの価格は日本に比

べて格段に安いのです。日本でも市販されているエビアンの1.5リットル入りペットボトルが100円程度で売られ

ているわけです。ちなみにエビアンはレマン湖を挟んでローザンヌの対岸にあるフランスの町です。

 さて折り返し点にそろそろ近づいたころ、すれ違いざまに手を上げて合図してくれるランナーがいるではありませ

んか!よくよく見ると例のドイツ人でした。私もとっさに手を上げて応えました。私よりかなり先行していました。この

頃には私は周囲を見回す余裕もなくなっていたのですが、それにしてもちょっと会っただけの私を、沢山のランナ

ーの中からわざわざ見つけ出して合図を送ってくれたドイツ人のその心遣いには熱いものを感じざるを得ませんで

した。こうして後半はふうふうの態でゴールにたどり着いたわけですが、ゴール地点では完走の証に5、6歳ほどと

思える小さな子供が立派なメダルを渡してくれました。疲労困憊してしばらくは動くこともできなかった私ですが、そ

の後ゴール地点で市民と一緒にゴールするランナーを迎えました。猛然とダッシュする人、子供を肩車してゴール

する人、さまざまです。

 翌日ローザンヌ市のホームページを眺めたらすでに結果が出ていました。私のタイムは3時間37分49秒で、1

482人中689位でした。痛快なのは私がベルソワ在住のスイス人に勘定されていることです。申し込むときに国

籍はjaponaiseと書いたはずなのに、何故かコンピュータの検索の網を抜けたのでしょう。スイスランキング1000

人中の468位にランクされていました。年令区分別では85人中34位でした。これで私も立派なスイス国民になっ

たというわけです。さて例の「三井マラソンツアー」は一体何者かと興味があったのでさっそくインターネットで調べ

たところ、スイス観光を兼ねたマラソンツアーであることがわかりました。このあとツエルマットなどを観光するよう

です。ローザンヌマラソンは世界的に見たらマイナーな大会だと思いますが、このような大会にも日本のマラソンブ

ームに便乗した旅行会社の商魂の逞しさには感心しました。

 ちなみに当日フルマラソンに参加した日本人(男子)は20人でした。優勝はエチオピア人で2時間16分24秒、今

年度のスイスチャンピョンは2時間21分15秒で4位、女子は優勝がフランス人で2時間38分41秒、スイスチャン

ピョンは2時間45分26秒で3位でした。

 ジュネーブは秋色濃くおびただしい枯葉が舞う季節となりました。市内には沢山のドングリの木があり、森は枯葉

とドングリで埋まっています。私がいつも通るレマン湖岸の道の脇にはそのドングリを餌としているに違いないシマ

リスも生活しており、時折その愛らしい姿を見せてくれます。当地は10月30日よりサマータイムが終わり冬時間

になりました。私は現在フランス語学校に通っており、1講目の授業に出るために毎朝暗いうちに起きて30分自転

車をこいでジュネーブ市内まで行かないといけなかったのですが、1時間だけ朝寝坊ができるようになったというわ

けです。朝が明るくなったので別世界のようですが、そのかわり、日の暮れるのも急に早くなったというわけです

(日本との時差はいままで7時間だったのですが何時間に変わったか分かりますか?)。

 旭川はそろそろ冬支度の季節かと思います。季節の変わり目ゆえ皆様風邪など引かないようにお過ごしくださ

い。最後にパスタパーティーとゴールシーンの写真を添付します。

平山 雄三  2000年11月2日

パスタパーティー ゴールシーン
パスタパーティー ゴールシーン



氷河 ◆写真の説明◆
ずいぶん前になりますが、9月23日(土)シャモニーに山歩きに行った

ときに撮影した氷河の写真を送ります。左奥に見えるのが北壁で有名

なグランドジョラスです。まさに神々しいという形容がぴったりです。こ

れらの針峰群を見ていると人間の驕りの入り込む余地がありません。

アルプスのことはまた機会があったらご紹介することにします。ジュネ

ーブは最近雨ばかりのうっとうしい天気が続いています。それではま

た。


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